FACOM 9450

FACOM 9450シリーズ：日本のビジネスシーンを支えた16ビット・パソコン

FACOM 9450シリーズは、富士通が1981年から1989年にかけて販売した、企業向けの16ビット・パソコンです。オフコンやワークステーションとしての側面も持ち、日本のビジネス環境において重要な役割を果たしました。本シリーズは、パナファコム（現PFU）がハードウェア開発・製造を担当し、富士通、松下電器産業（現パナソニック）の各ブランドからも販売されました。

開発背景と市場投入

シリーズのルーツは、1980年に富士通が保谷硝子向けに開発した特注パソコン「HIT-80」に遡ります。パナファコムはこれをベースに「C-180」を開発し、富士通と松下へ供給しました。当時、パナファコムは販売網が不足していたため、富士通と松下の販売網を活用したOEM供給は、市場参入の戦略として有効でした。1982年には、パナファコムが自社ブランドでも「C-180ファミリ」を発売しています。

富士通は「C-180」に独自の通信端末機能を追加し、1981年にFACOM 9450を発売しました。型番は、同社のメインフレーム用ディスプレイ端末から継承されています。当初は銀行や製造業など大企業への導入が中心でしたが、ビジネス向けパソコン市場が未成熟なため、大きな注目は集めませんでした。

競争激化とシリーズの進化

1983年、日本IBMが「マルチステーション5550」を発売すると、オフィスパソコン市場が活性化しました。富士通は同年、CPUやグラフィック機能を強化したFACOM 9450IIを発表。需要が急増し、生産能力の拡大を余儀なくされました。

1985年には、ワークステーション機能を強化したFACOM 9450Σが登場。処理能力とグラフィック機能が向上し、EPOCシリーズオフィスソフトとの連携や、メインフレームとのネットワーク連携機能も強化されました。しかし、オフコンやパソコンとの棲み分けが課題となりました。

[1987年]]には、UNIXベースのOSを採用したエンジニアリング[[ワークステーション]「FACOM Gシリーズ」を発表。FACOM 9450シリーズは、既存資産の継承と機能強化、事務処理と通信端末としての役割に重点を置く方向へシフトしました。

FMRシリーズへの統合

1989年、パソコン市場のオープン化と32ビット化の流れを受け、富士通はFMRシリーズとの両互換機を発売し、FACOM 9450シリーズはFMRシリーズに統合されました。25万台という累計販売台数は、その成功を示しています。

各モデルの特徴

FACOM 9450シリーズには、様々なモデルが存在し、それぞれに特徴があります。

FACOM 9450: 初期モデル。16ビットCPU MN1610Aを2個搭載。メインメモリは124KB。
FACOM 9450II: CPUやグラフィック機能を強化。メインメモリは384KB～512KB。漢字ROMを標準搭載。
FACOM 9450Σ: ワークステーション機能を拡張。高解像度ディスプレイと高度なグラフィック機能を搭載。メインメモリは1MB。
FACOM 9450Λ: 9450IIの後継モデル。性能向上とOSの更新。
FACOM 9450ΣmkII: 9450Σの後継モデル。CPU性能向上。
FACOM 9450ΛmkII: 9450Λの後継モデル。CPU性能向上。
FACOM 9450αmkII: エントリーモデル。小型筐体とプラズマディスプレイを採用。
FACOM 9450LTmkII: ラップトップモデル。プラズマディスプレイ内蔵。

まとめ

FACOM 9450シリーズは、その時代の技術を結集した企業向けパソコンとして、日本のビジネスシーンに貢献しました。独自のOSやオフィスソフト、メインフレームとの連携機能、そして多様なモデル展開は、当時の市場において大きな特徴でした。その歴史は、日本のパソコンの歴史において重要な一頁を刻んでいます。

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