FT-897

八重洲無線 FT-897：多機能アマチュア無線機の詳細

FT-897は、八重洲無線（旧バーテックススタンダード）が製造したアマチュア無線機であり、その多機能性と柔軟性から多くの愛好家に利用されてきました。この無線機は、HF帯から430MHz帯まで幅広い周波数帯をカバーし、SSB、CW、AM、FMなど、全てのアマチュア無線モードに対応するオールモード機です。

製品概要

FT-897は、その汎用性の高さから「モバイルベースステーション」と位置づけられています。これは、移動運用だけでなく、固定局としても利用できるように設計されていることを意味します。FT-8X7シリーズの一員として、FT-817やFT-857と共に、多くの無線愛好家に親しまれています。特に、後発のFT-857とは、回路構成がほぼ共通である点が特徴です。

FT-897には、出力の違いによって3つのモデルが存在します。FT-897Dは、HF帯で100W、144MHz帯で50W、430MHz帯で20Wの出力を持ちます。FT-897DMは、HF帯で50W、430MHz帯で20Wの出力です。FT-897DSは、HF帯から430MHz帯までの全帯域で20Wの出力です。これらのモデルは、出力は異なりますが、価格は同額に設定されていました。

主な特徴

FT-897の最大の特徴は、移動運用と固定運用の両方に対応できることです。屋外での運用を想定したオプションとして、内蔵バッテリーやアクティブチューニングアンテナ（ATAS-120AおよびATAS-25）が用意されています。これにより、電源のない場所でも無線運用が可能になります。一方、屋内での運用向けには、専用内蔵AC電源（FP-30）や専用オートチューナー（FC-30）が提供されており、安定した運用が可能です。これらのオプションにより、様々な環境での無線運用をサポートしています。

歴史

FT-897は、2002年に日本アマチュア無線振興協会(JARD)による工事設計認証を受け、同年9月10日に発売されました。発売後、そのデザインと機能性が評価され、2002年にはグッドデザイン賞を受賞しています。2004年には、高安定温度補償水晶発振器TCXO-9を標準実装したFT-897Dへとリニューアルされました。

しかし、2005年の総務省令無線設備規則改正により、一部の認証番号が一時的に無効になるという事態が発生しました。その後、2006年と2007年に再認証が行われ、使用期限が延長されました。最終的には、2014年8月に生産が終了しましたが、2016年にJARDが「スプリアス確認保証の対応」を発表し、FT-897はスプリアス確認保証を受けることができるようになり、現在でも免許申請が可能です。

まとめ

FT-897は、幅広い周波数帯と多様な運用モードに対応し、移動運用から固定運用まで柔軟に対応できるアマチュア無線機です。オプションも豊富で、ユーザーのニーズに合わせた運用が可能です。生産は終了しましたが、その性能と信頼性から、現在でも多くの無線愛好家に愛用されています。

脚注

FT-897（八重洲無線 - アマチュア無線） - ウェイバックマシン（2012年12月16日アーカイブ分）
スプリアス確認保証機器リスト (PDF) - 日本アマチュア無線振興協会 - スプリアス確認保証

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