GBU-28
GBU-28(
英語: Guided Bomb Unit 28)は、
アメリカ合衆国で開発された5,000ポンド(約2,268
キログラム)級の
レーザー誘導
地中貫通爆弾です。特に地下深くに強固に構築された目標を破壊することを目的に設計されており、「バンカーバスター」や「ディープ・スロート」といった通称でも知られています。
この
兵器の開発は、
テキサス・インスツルメンツ社の防衛システム・電子部門(後に
レイセオン社へ事業売却)によって手掛けられました。GBU-28が誕生した背景には、1991年の
湾岸戦争「砂漠の嵐作戦」における戦訓があります。開戦初期、
イラク軍が地下深くに構築した
司令部や貯蔵施設などが、従来の航空攻撃では破壊が極めて困難なほど堅牢であることが判明しました。これに対処するため、
アメリカ軍は緊急に、そのような強固な地下目標を貫通・破壊できる新たな
兵器の開発を求めました。
この要求に対し、開発期間を大幅に短縮するため、異例の手法が取られました。弾体の製造には、退役した
M110 203mm自走榴弾砲などで使用されていた8インチ(約203mm)
榴弾砲の砲身が転用されたのです。この砲身に高性能爆薬である
トリトナールを充填し、さらに尾翼、誘導センサー、そして
信管を取り付けることで、迅速な製造が可能となりました。この結果、開発着手から実際の戦場での使用まで、わずか1ヶ月に満たない期間で実現するという、
兵器開発としては極めて短期間での配備に至りました。ただし、「砂漠の嵐作戦」において実際に投下されたのは、F-111F
戦闘爆撃機による2発のみでした。
砂漠の嵐作戦後もGBU-28の生産は続けられ、後期の生産型では弾体が砲身転用から新規製造へと変更されました。標準的なGBU-28の重量は約4,700ポンド(約2,132
キログラム)で、そのうち630ポンド(約286
キログラム)が高性能
炸薬です。運用時には、目標位置に対して地上の部隊や航空機から
レーザーが照射され、投下された
爆弾はこの
レーザーの反射スポットを追尾して誘導されます。
GBU-28の強力な地中貫通能力は、
ネバダ州にある大規模な試験施設、トノパテストレンジでの評価によって確認されています。試験結果によれば、地表から約30メートル、あるいは厚さ約6メートルの
鉄筋コンクリート構造物を貫通することが可能です。
アメリカ軍以外への最初の販売は、
イスラエルに対して行われました。
2005年4月に100発の売却が認可され、
2006年7月には
イスラエルからの要請を受けて供給が前倒しされました。
イスラエル軍は、
イランや
シリアを仮想敵とした地下施設への対処を念頭に配備を進めていると考えられています。さらに、
2013年には韓国にも販売され、北朝鮮の地下核施設やミサイル基地といった目標を破壊するため、韓国空軍のF-15K
戦闘爆撃機に搭載されて運用されています。
かつてGBU-28の主要な搭載機であったF-111
戦闘爆撃機は既に退役しており、現在この「バンカーバスター」を運用できるのは、F-15Eシリーズ、およびその派生型である
イスラエル向けのF-15Iや韓国向けのF-15Kといった一部の
戦闘爆撃機に限られています。
関連情報
地中貫通爆弾
大型貫通爆弾
GBU-72
F-111
* F-15E