GMC・エンボイ

エンボイ (ENVOY)

エンボイは、アメリカの自動車メーカーであるゼネラルモーターズ（GM）が製造し、GMCブランドから販売されたミッドサイズSUVです。

初代 (1997年 - 2000年)

初代エンボイは1997年に市場に投入されました。これは既存のGMCジミーの上位グレードとして位置づけられ、標準的なジミーには設定されていない豪華な装備を数多く備えていました。リモートトランクリリースやHIDヘッドランプ、ヒーター付きドアミラーとフロントシート、そしてボーズ製のサウンドシステムといった特別装備が標準で搭載され、オプションではパワーサンルーフやロッキングディファレンシャル、フロントパワーシートなども選択可能でした。これにより、ジミーの派生モデルとして、よりラグジュアリーなニーズに応えるモデルとして展開されました。

2代目 (2002年 - 2009年)

2代目エンボイは2002年に全く新しいモデルとして登場しました。このモデルは、それまでのジミーの後継としての役割を担いました。同時代のシボレー・ブレイザーの後継であるシボレー・トレイルブレイザーとは、共通のGMT360系プラットフォームを使用しながらも、エクステリアデザインには明確な違いが与えられていました。また、このエンボイをベースとした車両が、米国いすゞ自動車から「アセンダー」として販売されるなど、他ブランドへの供給も行われました。2代目はその実力を高く評価され、自動車専門誌「モーター・トレンド」によって2002年のSUV・オブ・ザ・イヤーに選ばれています。

パワートレインには、主に2種類のエンジンが搭載されました。一つは直列6気筒4.2リッターエンジンで、このエンジンは2002年から2005年にかけて「テン・ベスト・エンジン」に選ばれるなど、その性能が高く評価されました。もう一つはV型8気筒5.3リッターエンジンで、主にロングボディのXLや最上級グレードのデナリに搭載され、2005年以降は燃費効率向上のため気筒休止機構が採用されました。

生産は、標準ボディモデルがオハイオ州モレーン工場、ロングボディのXLおよびユニークなXUVモデルがオクラホマ州オクラホマシティの組み立て工場で行われていました。しかし、2006年2月20日にオクラホマシティ工場が閉鎖されたことに伴い、2007年モデルイヤー以降は標準ボディのみのラインナップとなりました。さらに、2008年12月23日にはモレーン工場も閉鎖され、エンボイは2009年モデルイヤーをもって生産が打ち切られました。エンボイの実質的な後継モデルとしては、中型クロスオーバーSUVであるGMCテレインが市場に導入されています。

バリエーション

エンボイには、標準ボディ以外にもいくつかのユニークなバリエーションが存在しました。

エンボイXL

トレイルブレイザーのロングホイールベース版と同様に、エンボイにも3列シートを備えた7人乗りのロングボディモデルであるエンボイXLが設定されました。標準ボディに比べてホイールベースが16インチ（約410mm）延長され、3列目の居住空間を確保するためにルーフが高められていました。このモデルはオクラホマシティ工場の閉鎖に伴い、2006年モデルイヤーをもって生産が終了しました。その役割の一部は、後に登場したクロスオーバーSUVのGMCアカディアが担うことになります。

エンボイXUV

2003年に登場したエンボイXUVは、5人乗りでありながら、SUVとピックアップトラックの機能を融合させた野心的なモデルでした。特徴的なのは、1960年代のスチュードベーカー・ワゴネアを彷彿とさせる電動可動式のリアルーフセクションです。このルーフを開くことで、荷室高を超える背の高い荷物を積載することが可能でした。テールゲートは横開きと下開きの両方に対応する2ウェイタイプで、リアのガラスはテールゲート内に格納できる構造になっていました。さらに、荷室と後部座席の間には「ミッドゲート」と呼ばれる仕切りが設けられていました。これは背もたれと同じ高さのガラス付きプラスチックパネルで、荷室とキャビンを完全に分離したり、必要に応じて一体化させたりすることができました。荷室は防水加工が施され、水洗いできるように排水システムまで備えていました。

ピックアップトラックやシボレー・アバランチのようなトラックベースの車種と比較した場合、エンボイXUVの最大の利点は、ルーフとリアガラスを閉じることで、ルーフの高さまで確保されたカーゴエリアを天候から保護し、密閉できる点でした。一方で、短いカーゴベッド長や、側面ガラスが破損しやすいといった欠点も指摘されました。販売面では苦戦を強いられ、年間3万台という目標に対し、2004年の実績は約1万2000台に留まりました。その結果、XUVの製造は2005年3月15日に打ち切られました。

デナリ

2005年モデルイヤーからは、GMCブランドの最上級グレードを意味する「デナリ」がエンボイにも設定されました。標準ボディとXLの両方にデナリモデルが用意され、特徴的なハニカムグリルやアップグレードされた内装、ヒーター付きパワーシート、木目調トリム、雨滴感知式ワイパーといった高級車並みの装備が与えられました。エンジンは気筒休止機構付きの5.3リッターV8エンジンが搭載されました。登場時の価格帯は、標準ボディのエンボイデナリが37,145ドルから42,750ドル、エンボイXLデナリが38,575ドルから43,895ドルでした。2006年モデルでは、新たに18インチのアロイホイールが装着されるなど、さらなる改良が加えられています。

車名について

「ENVOY（エンヴォイ）」という車名は、英語で「使節」や「（外交上の）公使」といった意味を持ちます。