シボレー・ブレイザー

シボレー・ブレイザーは、アメリカの自動車メーカー、ゼネラルモーターズ（GM）が「シボレー」ブランドで展開するスポーツ用多目的車（SUV）の名称です。この名称は長い歴史の中で複数の異なるモデルに使用されており、過去には大型の「K5ブレイザー」と、より取り回しやすいコンパクトな「S-10ブレイザー」の2種類が存在しました。

時代を経て一度ラインナップから姿を消しましたが、2018年には全く新しいクロスオーバーSUVとして車名が再び用いられ、さらに2022年 7月には電気自動車（EV）専用モデル「ブレイザーEV」も発表されるなど、現代のニーズに合わせて進化を続けています。

歴史的モデル

K5ブレイザー（フルサイズSUV）

オリジナルのブレイザー、通称K5ブレイザーは、1969年に市場に投入されました。当時、シボレーのトラックラインナップで最も小型だった第2世代のC/Kピックアップトラックを基盤として開発されたSUVです。GMのGMC部門からは、「K5ジミー」という名称の姉妹モデルも販売されました。後のモデルチェンジを経て、シボレー版は1995年に「タホ」に、GMC版は1992年に「ユーコン」へと名前が変わりました。

第1世代（1969-1972）

この初代モデルは、先行するフォード・ブロンコへの対抗馬として登場しました。ブロンコが専用設計のオフローダーを目指したのに対し、GMは既存のライトトラック、C/Kシリーズのプラットフォームを流用するという戦略を取りました。このアプローチは開発コストを抑えるだけでなく、ブロンコを上回る広々とした室内空間と、市場で人気の高かったピックアップトラックに近いスタイリングという利点をもたらしました。その結果、K5ブレイザーは瞬く間に人気を集めました。1974年にダッジ・ラムチャージャーが登場して同様のトラックベースSUV市場に追従したこともあり、ブロンコも後に自社のFシリーズピックアップトラックをベースとする設計へと移行。これにより、米ビッグスリーにおけるSUV開発の方向性が定まることとなります。

1969年の発売時は四輪駆動モデルのみでしたが、翌1970年には後輪駆動モデルも追加されました。エンジンは、直列6気筒（4.1L、4.8L）やV型8気筒（5.0L、5.7L）など、複数の選択肢が用意されていました。

第2世代（1973-1991）

1973年にフルモデルチェンジが行われました。この世代でも1982年までは後輪駆動モデルが生産されましたが、販売の主力は四輪駆動でした。1976年には取り外し可能なトップを持つコンバーチブル仕様が登場し、このスタイルは1991年まで継続されました。1987年にGMは新しいGMT400プラットフォームを開発しましたが、ブレイザーはこの世代の終わりまで古いプラットフォームを使用し続けました。しかし、1989年には外観がGMT400シリーズのピックアップトラックに近いデザインに変更されました。この世代のK5ブレイザーは、力強いエンジンと豊富なバリエーションにより、オフロード愛好家から高い支持を得ました。V8 400キュービックインチエンジンに加え、V8 6.2Lディーゼルエンジンもラインナップされました。1981年にはオイルショックの影響を受け、燃費向上のための高圧縮V8 305キュービックインチエンジンも導入されましたが、十分なパワーは得られませんでした。

第3世代（1992-1994）

1992年、K5ブレイザーは新しいGMT400プラットフォームをベースにモデルチェンジを果たしました。このモデルから、GMC版は「ユーコン」に改称されました。この世代では、エンジンは5.7L V8（210馬力）の1種類に集約されました。そして1995年、ブレイザーはホイールベースを延長した4ドアモデルを追加すると同時に、「タホ」という新しい名称に変更され、K5ブレイザーとしての歴史に幕を閉じました。

S-10ブレイザー（コンパクトSUV）

S-10ブレイザーは、当時台頭していた日本製小型SUVに対抗するため、シボレーが自社開発したコンパクトピックアップトラック、S-10シリーズを基盤として開発されたモデルです。フルサイズのK5ブレイザーとは異なる設計思想に基づいています。このシリーズからもGMC版として「S-15ジミー」が登場し、さらにオールズモビル部門からは「ブラバダ」という姉妹車も販売されていました。

第1世代（1983-1994）

シボレーは1972年からいすゞ・ファスターのOEM供給を受けて「LUV」という小型ピックアップトラックを販売していましたが、1982年に自社開発のS-10が登場し、その座を引き継ぎました。S-10ブレイザーとGMC S-15ジミーは1983年に発売されました。スタイリングは初代K5ブレイザーやジミーのデザイン要素を取り入れつつ、コンパクトにまとめられていました。当初はK5と同様に2ドアモデルのみが設定されていました。パワートレインの基本は2.0L直列4気筒エンジン（83馬力）で、オプションで2.8L V6エンジン（110馬力）も選択可能でした。排気ガス規制に対応するため、いすゞ製の1.9L直列4気筒や2.2Lディーゼルエンジンも一時的にラインナップされましたが、1985年からは2.5Lエンジンに置き換えられました。1986年には燃料噴射システムが導入され、性能が向上しました。1990年にはホイールベースを延長した4ドアモデルが追加され、実用性が高まりました。

第2世代（1995-2005）

1995年、S-10ブレイザーはフルモデルチェンジを受けました。ベースとなったのは、先にモデルチェンジしていたS-10/ソノマ・ピックアップです。この世代から、車名から「S-10」および「S-15」のプレフィックスが外され、単に「ブレイザー」および「ジミー」として販売されることになりました。（フルサイズ版が「タホ」に改称されたのと同時期です）。この年、ブレイザーは「トラック・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど高い評価を得ました。1999年には内外装をアップグレードした限定パッケージ「トレイルブレイザー」が登場し、後の後継車種が登場するまで販売が継続されました。GMC版のジミーにも、1998年モデルイヤーから豪華グレード「エンボイ」が設定されました。2001年にはGMT360プラットフォームを採用した後継モデルとして、シボレー・トレイルブレイザーとGMC・エンボイが登場しましたが、ブレイザー（およびカナダでのジミー）はエントリーモデルとして継続生産され、シボレーからは2005年にエクイノックスが投入されるまで販売が続けられました。

クロスオーバー世代（2018-）

2018年に「ブレイザー」の名称が復活し、全く新しいモデルとして登場しました。これまでのK5やS-10のようなラダーフレーム構造ではなく、乗用車に使われるFF（前輪駆動）ベースのプラットフォームを採用したクロスオーバーSUVとなりました。

日本での販売

日本では、当時の輸入元であったヤナセがシボレー車の正規輸入を行っており、S-10ブレイザーの第1世代モデルを1990年 1月から販売しました。当初は4ドアモデルのみでしたが、同年11月には2ドアモデルも導入されました。しかし、2ドアモデルは1991年 11月に販売が終了。その後も細かな改良は続けられましたが、国内市場では比較的地味な存在でした。

1995年 4月には、フルモデルチェンジしたS-10ブレイザーの第2世代モデルが「ブレイザー」として導入されました。当初はエントリーグレードのLSのみでしたが、同年10月には上級グレードのLTや、キャンピングカー登録に対応した「フォレシエスタ」仕様が追加されました。1998年 11月のマイナーチェンジでは、すべてのモデルが右ハンドル仕様となり、日本市場への適応が進みました。2001年 9月に後継モデルであるトレイルブレイザーが導入された後も併売されましたが、2002年をもってブレイザーとしての正規販売は終了しました。

シボレー・ブレイザー