H級駆逐艦 (初代)

イギリス海軍 H級駆逐艦

H級駆逐艦は、イギリス海軍が第一次世界大戦前に建造した駆逐艦の艦級です。当初は「エイコーン」をネームシップとするエイコーン級として知られていましたが、1913年にH級として再分類されました。この艦級は、当時のイギリス海軍の駆逐艦に対する要求の変化と、それに伴う設計思想の転換を反映したものです。

来歴

1908年、アスキス内閣は社会保障の財源を確保するため、海軍の増強計画の見直しを迫られました。仮想敵がドイツ帝国海軍に変更されたことで、イギリス海軍の駆逐艦はリバー級（E級）、トライバル級（F級）と大型化・高コスト化の傾向にありました。このような状況下で、1908-9年度計画のビーグル級（G級）では小型化とコスト削減が試みられました。ビーグル級はF級に比べて約20％の建造費削減に成功しましたが、依然としてコスト高であったため、1909-10年度計画では更に30％の削減が求められ、その結果としてH級が誕生しました。

設計

H級駆逐艦は、E級以来の船首楼型を踏襲していますが、艦型の縮小によって生じる堪航性の低下を補うため、船首楼甲板の高さを増し、艦橋をできる限り後方に移動させました。しかし、この設計変更は、煙突からの排煙が艦橋に直接影響を及ぼすという問題を引き起こしました。当初の計画では3本の煙突は同じ高さでしたが、計画途中で1番煙突を約1.8メートル延長する修正が行われました。

主機については、蒸気タービンとレシプロ蒸気機関、そして石炭専焼式と重油専焼式の水管ボイラーの採用が検討されました。特に燃料については、重油の備蓄量に対する不安からビーグル級では石炭が採用されましたが、H級では機関部員の削減、航続距離の延伸、機関重量の軽減といったメリットを考慮し、重油が採用されました。主機の型式や構成、軸数はビーグル級と同様ですが、ボイラーは4缶とされました。

また、イギリス海軍の従来の駆逐艦ではパーソンズ式直結タービンが採用されていましたが、H級の「ブリスク」では、ブラウン・カーチス式直結タービンによる2基2軸方式が試験的に導入されました。ブラウン・カーチス式タービンは機関構成が単純化できる上、低速域での燃費向上が期待されましたが、海上公試では期待されたほどの効果は得られませんでした。しかし、その後の改良により、パーソンズ式タービンと共にイギリス駆逐艦の主機として採用されるようになりました。

装備

H級駆逐艦は、ビーグル級よりも小型化されましたが、兵装は同等以上のものが搭載されました。艦砲の配置はビーグル級のものが踏襲されています。ビーグル級では、40口径10.2cm砲（BL 4インチ砲Mk.VIII）1基と40口径7.6cm砲（QF 12ポンド砲）3基が搭載されていましたが、H級では後部の12ポンド砲を4インチ砲に換装し、砲熕火力を強化しました。また、船首楼甲板が高くなったことで、従来はプラットフォーム上に設置されていた艦首砲を、船首楼甲板上に直接設置する方式に変更しました。水雷兵装はビーグル級と同様に、53.3cm単装魚雷発射管2基を装備しています。

同型艦

（同型艦リストは原文に記載がないため省略）

参考文献

（参考文献リストは原文に記載がないため省略）

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