H級駆逐艦 (2代)

H級駆逐艦：イギリス海軍の主力駆逐艦

H級駆逐艦は、イギリス海軍が1934-35年度計画で建造した駆逐艦の艦級であり、G級駆逐艦の小改正型として9隻が建造されました。また、ブラジル海軍向けに建造されていた6隻も、第二次世界大戦の勃発に伴いイギリス海軍に編入され、同級に加わりました。ネームシップである「ヒーロー」にちなんで「ヒーロー級」とも呼ばれます。

来歴

1924年度から駆逐艦の建造を再開したイギリス海軍は、第一次世界大戦の教訓と新技術を導入した「アマゾン」と「アンバスケイド」を試作艦として建造。その後、量産型としてA級、小改正型のB級を建造しました。さらに、C級では大型化と燃料搭載量の増加を、D級では対潜能力の強化をそれぞれ図りました。

続くE級とF級では艦砲と水雷兵器を更新しましたが、ロンドン海軍軍縮条約の影響で艦型の抑制が求められ、G級では機関部の設計変更による艦型圧縮が試みられました。そして、G級を基にした小改正型として建造されたのが、本級H級駆逐艦です。

設計

船首楼型、2本煙突という基本構成はC級からG級までと同様です。外観上もG級と大差ありませんが、嚮導艦「ハーディ」では三脚式の前後檣が採用され、「へレワード」では操舵手の視界確保のため、トライバル級用に設計された新型艦橋が導入されました。この新型艦橋は、操舵所を装甲化し、傾斜した天蓋が船首楼のような印象を与えました。この設計は、新型砲塔を搭載しない「ヒーロー」にも採用されました。

機関構成はG級の方式を踏襲し、アドミラルティ式3胴型水管ボイラーを基本としました。しかし、「ハイペリオン」はジョンソン式水管ボイラーを搭載しました。タービンはパーソンズ式オール・ギヤード・タービンを採用。艦型圧縮のため巡航タービンは省略されました。しかし、排水量が計画値を上回り、公試速力が36ノットに達しない艦が多かったようです。

装備

艦砲は、G級と同様に45口径12cm砲を4門搭載しましたが、砲架は改良型のCP Mk.XVIIIに更新されました。この更新によりトップヘビーの問題が生じました。嚮導艦「ハーディ」は5門搭載、また、「へレワード」ではトライバル級用に開発された連装砲架が試験搭載されましたが、後に他の艦と同様の装備に換装されました。対空兵器はG級と同じく、4連装12.7mm機銃を採用しました。

水雷兵器は、4連装21インチ魚雷発射管2基とMk.IX魚雷の組み合わせが基本でした。対潜戦用には124型ソナーと対潜爆雷投射機、対機雷戦用には2速駆逐艦掃海具が搭載されました。

第二次世界大戦勃発後、一部の艦は護衛駆逐艦として改装され、4.7インチ砲や後部魚雷発射管の撤去と引き換えに、20mm機銃の増設、ヘッジホッグ対潜迫撃砲の搭載、爆雷搭載数の増加などの強化が施されました。

同型艦

H級駆逐艦は、通常型8隻と嚮導艦1隻の合計9隻が建造されました。第二次世界大戦中、「ホットスパー」と、カナダ海軍に譲渡され「ショーディエール」に改名された「ヒーロー」を除く7隻が戦没しました。「ショーディエール」も戦後解体され、「ホットスパー」のみがドミニカ共和国海軍に譲渡され、1972年まで運用されました。

ハヴァント級

ブラジル海軍が発注したジュルアー級駆逐艦6隻は、第二次世界大戦勃発によりイギリス海軍が購入し、H級に編入されました。これらは「ハヴァント級」と呼ばれ、オリジナルのH級と区別されます。基本性能はほぼ同一ですが、内装が異なり、12cm単装砲塔を3基に減らす代わりに、対潜兵装が大幅に強化されています。

ハヴァント級は第二次世界大戦で3隻が戦没し、残った3隻もブラジルに引き渡されることなく解体されました。

アクレ級（アマゾナス級）

ブラジル海軍は、ジュルアー級の代艦として、国内でアクレ級駆逐艦を建造しました。H級を基本設計としていますが、煙突が1本になり、主砲はアメリカ製38口径5インチ単装砲に変更されました。建造の遅れにより、就役は戦後の1949年から1951年になりました。

H級駆逐艦は、その数々の改良と戦時中の役割から、駆逐艦史において重要な位置を占めています。

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