HD 213885

HD 213885（別の呼び名としてTOI-141やTIC 403224672とも称される）は、太陽によく似たタイプであるG型に分類される恒星です。私たちから見て、南天のきょしちょう座の方向におよそ156光年という距離に位置しています。その年齢は約38億年と見積もられており、これは太陽の約46億年よりやや若い星ということになります。この恒星が特に注目されているのは、その周囲に少なくとも二つの太陽系外惑星が存在していることが明らかになっているためです。

惑星系の発見

この惑星系は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が運用するトランジット系外惑星探索衛星TESSによる精密な観測データから発見されました。TESSは、恒星の手前を惑星が通過（トランジット）する際に発生するわずかな光の減光を捉えることで、惑星の存在を検出します。HD 213885の周囲を巡る惑星の発見は、2019年3月18日にプレプリントサーバであるarXiv上で科学論文として報告され、その存在が広く知られることとなりました。

惑星 HD 213885 b

内側の惑星は「HD 213885 b」と名付けられています。この惑星は、地球よりも大きく、しかし海王星よりは小さいサイズの天体を指す「スーパー・アース」に分類されます。その半径は地球の約1.74倍に達します。最も際立った特徴はその軌道で、主星HD 213885のすぐ近くを、驚くほど短い約1日という周期で公転しています。恒星に極めて近接しているため、その表面温度は計算上、摂氏1855度という猛烈な高温になると推定されています。このような極限環境下では、惑星の表面は岩石が融解したマグマの海に覆われていると考えられています。HD 213885 bは、同じくホットなスーパー・アースであり、マグマオーシャンを持つ可能性が指摘されているかに座55番星eと似た性質を持っている可能性があり、比較研究の対象として重要視されています。

惑星 HD 213885 c

もう一つの外側の惑星は「HD 213885 c」と呼ばれています。この惑星は、質量が地球の約19.9倍と推定されており、これは私たちの太陽系における海王星のようなガスや氷を主成分とする惑星に近い性質を持っていることを示唆しています。HD 213885 cのようなタイプの惑星は、その大気の組成などを詳細に調べるための有力な候補となり得ます。特に、惑星が主星の手前を通過する際に、恒星の光が大気を透過する様子を観測する「透過光分光法」という手法を利用することで、惑星の大気に含まれる物質の痕跡を捉えることができるかもしれません。これにより、惑星の形成過程や大気環境に関する貴重な情報が得られる可能性があります。

まとめ

HD 213885惑星系は、極めて高温で灼熱のスーパー・アースと、その外側を公転する海王星型の惑星という、対照的な性質を持つ二つの惑星で構成されています。このような構成は、多様な太陽系外惑星系の姿を示す一例であり、惑星の形成や進化の理論を検証する上で興味深い対象となっています。今後のさらなる観測や研究によって、この独特な惑星系の詳細が解き明かされていくことが期待されます。

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