HD 38529

HD 38529: オリオン座の連星系

HD 38529は、オリオン座に位置し、地球から約138光年離れた連星系です。この星系は、主星HD 38529 Aを中心に、1つの系外惑星と1つの褐色矮星、さらには残骸円盤が存在することが知られています。

星系の概要

HD 38529 Aは、見かけの等級が6と、肉眼でも辛うじて確認できる明るさを持つ恒星です。この恒星は、スペクトル型G4 IVに分類される黄色の準巨星であり、質量は太陽の約1.4倍、半径は2から3倍あり、有効温度は約5,500 K、光度はおおよそ太陽の6倍と推定されています。

この恒星の周囲には、2つの亜恒星が軌道を回っており、残骸円盤の存在も確認されています。最も近い伴天体は木星型の惑星で、遠方には褐色矮星が存在することが考えられています。

2006年には、HD 38529の西北西約4.7分の位置にある13等星がHD 38529と共通の運動を持つことが判明しました。この伴星はHD 38529 Bと呼ばれ、スペクトル型M2.5 Vに分類される赤色矮星です。分析によって、HD 38529 AとHD 38529 Bは重力的に束縛されていると考えられています。

惑星系の特徴

2000年に、デブラ・フィッシャーらにより、リック天文台とケック天文台の観測でHD 38529 Aの周辺に系外惑星を発見しました。この惑星はHD 38529 bと名付けられ、質量は木星の約80%で、公転周期は14.3日です。なお、HD 38529 bはホット・ジュピターという定義には該当しない位置関係にあります。

同じ研究チームは、HD 38529 b以外にも周期が1,500日を超えるケプラー運動の兆候を示す他の天体があることを示し、後にその候補天体はHD 38529 cとして特定されました。HD 38529 cは、質量が木星の13倍以上であり、ハッブル宇宙望遠鏡によるデータをもとにその軌道傾斜角も推定されています。この結果、HD 38529 cは惑星ではなく、むしろ褐色矮星に分類される可能性が高いと考えられています。

また、スピッツァー宇宙望遠鏡による観測により、HD 38529 Aの周囲に星周塵が存在することが示唆されています。力学的な分析から、HD 38529 bの外側やHD 38529 Aから20 au以上離れた領域には、微惑星が安定して存在できる条件があるとされています。

残骸円盤の存在も確認されており、ハーシェル宇宙天文台の観測によって、半径約50 auから200 auの範囲にわたって、この円盤が広がっていると推定されています。

HD 38529は、連星系の中でも特異な構造を持ち、惑星形成の過程や他の天体の挙動を理解する上で重要な天体であります。

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