HQS-101 (ソナー)

対潜飛行艇用ソーナーHQS-101

対潜飛行艇用ソーナーHQS-101は、海上自衛隊の対潜哨戒機であるPS-1に搭載される吊下式ソナーで、沖電気工業によって開発されました。1950年代に潜水艦の能力が向上する中、既存の電波を使用した探知が効果を失いつつあり、音響機器への依存が高まっていきました。このような背景から、航空機が搭載できる水中音響機器の開発が求められ、特にパッシブソナーが注目されるようになりました。

当時、ヘリコプターはレシプロエンジンを搭載し振動が大きく、さらに搭載量にも制約がありました。これに対し、飛行艇は水面に着水して安定したプラットフォームを提供できるため、アメリカ海軍は飛行艇の開発を進めました。しかし、開発が進む中で計画は中断され、日本でも同様の対潜飛行艇の開発が模索されました。

1958年、海上自衛隊は新明和工業の研究成果を元にPX-S計画（後のPS-1）を立ち上げ、その核心となるセンサーとしてHQS-101の開発がスタートしました。日本は航空機用ソナーの開発経験がなかったものの、アメリカからの技術支援を受け、ソナー技術の向上を図ったのです。

HQS-101の設計は、大型のパッシブソナーからスタートし、その後、アメリカの技術資料を活用しながら小型化が進みました。1964年には基本要目の改訂が行われ、多機能化へとつながる進展がありました。最終的には、国内製作の部品が多くを占めるようになり、後の電子機器開発に大きな影響を与えました。

HQS-101の主要な構成要素には、約500キログラムの送受波部、130キログラムの吊下ケーブル、400キログラムの巻上機、そして400キログラムの電子機器と指示器が含まれています。特に、送受波器は数チャネルのアクティブ周波数を持ち、パッシブモードでは3-6キロヘルツの音を記録します。これによって、音響信号の処理が可能となり、音波の解析を行うことができました。

本機は開発がすすむにつれて順次改良が行われ、さまざまなバージョンが登場しました。初期型のHQS-101は、PS-1の運用においてパッシブソナーとしての機能が期待されていましたが、機内の騒音が影響しアクティブモードでの運用に依存する展開が多く見られました。また、PS-1の着水可能率は約64%にとどまるため、悪天候や夜間での運用は難しく、これも運用上の制約となりました。

さらに、日本周辺の海域では水中で高速を保つ原子力潜水艦も存在し、これに対する追尾が困難な状況もありました。こうした中で、ソノブイ技術が進展すると、飛行艇による浅海面での検索能力において劣位になり、PS-1は本機を装備していても持ち味を発揮する場面は限られていきました。

最終的に、HQS-101は1970年代に進化を続けながらも、対潜戦術の主流が変化する中で、運用の場面が減少していきました。これにより、PS-1は他の対潜装備を優先する傾向が強まったため、本機は運用のなかでデッドウェイトとなる時期も訪れました。これらの過程を経て、HQS-101は日本における対潜哨戒技術の発展に寄与する重要な役割を果たしたものとして歴史に名を刻んでいます。

もう一度検索