IBM 3270
IBM 3270は、1972年にIBMが開発したメインフレームコンピュータ用の表示装置サブシステムです。これは、先行モデルであるIBM 2260端末の後継機として登場しました。1980年代から1990年代にかけて、IBMのホストコンピュータへのデータ入力と出力は、主にこの3270端末を通じて行われ、日本を含む世界中の企業で広く利用されました。
3270の最大の特徴は、それまで主流だったシリアルASCII端末とは異なり、「データストリーム」と呼ばれる大きなデータブロックを一度に送受信できる点です。これにより、データ送受信に必要なI/O割り込みの回数を大幅に削減し、専用の高速通信インターフェースを利用することで、効率的なデータ処理を実現しました。
IBMは既にパンチカードや端末の製造を終了していますが、IBM 3270プロトコルは、現在でもメインフレームにアクセスするためのアプリケーションソフトウェアによってエミュレートされ、広く利用されています。近年では、Webインターフェースを持つメインフレームアプリケーションが増加していますが、コールセンターなど一部の環境では、依然として3270の「グリーンスクリーン」インターフェースが最も生産的で有効な手段として活用されています。
3270端末は、データストリーム内でテキストとコントロール（フォーマット）情報を混在させ、画面全体を一度に更新する「画面単位」の処理を行います。画面は、属性（色、輝度、文字セット、書き換え可否など）を持つ文字セルが集まったクラスターとして扱われ、これらの属性を組み合わせて画面表示を構成します。
また、「Read Modified」というテクニックにより、ユーザーが変更を加えたフィールドのみを効率的に読み取ることが可能です。これにより、変更されたデータのみを送信することで、データ転送量を大幅に削減します。この方式は、文字単位の割り込み処理に慣れたユーザーにとっては異質に感じるかもしれませんが、現在のWebインターフェースの多くも、同様のデータ転送方式を採用しています。
初期の3270端末にはPFキー（プログラム機能キー）がありませんでしたが、後に12個、さらに24個のPFキーと3つのPAキー（プログラムアテンションキー）がキーボードの上部に搭載されました。これらのキーを押すと、制御ユニット（IBM 3274やIBM 3174など）にI/O割り込みが発生し、キー固有のコードが実行されます。これにより、アプリケーションの機能（終了、ページアップ、ヘルプなど）をワンタッチで呼び出すことができ、プロセッサの負荷を軽減することが可能になりました。
これらの技術革新により、初期の16MBのメモリしか持たない3033メインフレームコンピュータでも、CICS環境下で17,500台もの3270端末をサポートすることができました。
ただし、3270端末はViのような柔軟な操作はできませんでした。Lotus 1-2-3をメインフレームの3279画面に移植する試みも、スプレッドシートのユーザーインターフェースが3279画面の特性に合わなかったため、成功しませんでした。一方で、IBM OfficeVisionのようなオフィスソフトウェアは3270との連携に大きな成功を収めました。これは、そのデザインが3270の特性をよく理解し、長年にわたってPROFS/ODPSカレンダーが世界中のオフィス端末で広く使われていたためです。
現代のWeb技術（HTTP）は、3270と同様に、端末（ブラウザ）がユーザーインターフェースの大部分を担い、サーバー側の負荷を最小限にする仕組みを採用しています。このような観点から見ると、かつての3270端末はダム端末に比べて、よりスマートでプログラマブルなインテリジェント端末であったと言えるでしょう。
IBM 3270表示端末サブシステムは、表示装置、プリンター、制御装置で構成されています。発表された時期によって、以下の4つの主要な段階に分けられます。
1. 1971年：3271/3271制御装置、3277表示装置、3284プリンターからなる最初の基本サブシステム。
2. 1977年：3276表示・制御装置、3278表示装置など、サブシステム機能の大幅拡張。
3. 1979年：3279カラー・テキスト/カラー・グラフィックス表示装置、3287カラープリンター。
4. 1983/84年：3178低価格表示装置、3179低価格カラー・テキスト表示装置。
表示装置
3277 model 1：16×40文字表示
3277 model 2：24×80文字表示（最大の成功モデル）
3277 model 3：32×80文字表示
3277 GA：RS232C I/Oを搭載した3277（Tektronix 4013または4015グラフィック画面の駆動に使用）
3278 models 3,4,5：アクセント付き文字やデッドキーをサポート
model 2：24×80文字表示
model 3：32×80文字表示
model 4：43×80文字表示
model 5：27×132文字または24×80文字（切り替え可能）
3278 PS：プログラム可能な文字表示機能、モノクログラフィック表示が可能
3279：カラー端末、4色（テキスト）または7色（グラフィックス）表示
3178：低価格端末（1983年）
3179：低価格カラー端末（1984年）
3270 PC：3270端末エミュレーションを含むIBM PCのバージョン（1983年9月リリース）
表示・制御装置
3276：表示・制御装置（リモート制御装置として、最大6台の表示装置を制御可能）
プリンター
3284
3287：カラープリンター
3288：ラインプリンター
制御装置
3271：リモート制御装置
3272：ローカル制御装置
IBM 3270表示端末機サブシステムのアーキテクチャと開発は、主に米国ニューヨーク州のIBMキングストン開発研究所で行われました。プリンターは、同州のエンディコット開発研究所で開発されました。サブシステムの拡張に伴い、日本のIBM藤沢開発研究所（後の大和開発研究所）が3276表示・制御装置、3178表示装置、3179カラー表示装置を開発し、イギリスのIBMハーズレー開発研究所が3279カラー表示装置、3287カラープリンターを開発しました。
製造は、主にキングストンでアメリカ、アジア、オセアニア向けが行われ、エンディコットでプリンターが、イギリス・スコットランドのグリーノックでヨーロッパ向けが行われました。
TN3270は、TCP/IPネットワーク上で3270端末エミュレータを動作させるための、Telnetプロトコルの修正版です。標準的なTelnetクライアントは、TN3270クライアントの代わりとして使用することはできません。これは、両者のプロトコルとエスケープシーケンスが大きく異なるためです。
代表的なTN3270クライアント
IBM Host On-Demand and Personal Communications
Attachmate EXTRA!
QWS3270
Rumba
Reflection
EXTES
IBM 5250表示装置（IBM AS/400接続用）
IBM 2260表示装置（IBM 3270の前身）
3270の最大の特徴は、それまで主流だったシリアルASCII端末とは異なり、「データストリーム」と呼ばれる大きなデータブロックを一度に送受信できる点です。これにより、データ送受信に必要なI/O割り込みの回数を大幅に削減し、専用の高速通信インターフェースを利用することで、効率的なデータ処理を実現しました。
IBMは既にパンチカードや端末の製造を終了していますが、IBM 3270プロトコルは、現在でもメインフレームにアクセスするためのアプリケーションソフトウェアによってエミュレートされ、広く利用されています。近年では、Webインターフェースを持つメインフレームアプリケーションが増加していますが、コールセンターなど一部の環境では、依然として3270の「グリーンスクリーン」インターフェースが最も生産的で有効な手段として活用されています。
3270の動作原理
3270端末は、データストリーム内でテキストとコントロール（フォーマット）情報を混在させ、画面全体を一度に更新する「画面単位」の処理を行います。画面は、属性（色、輝度、文字セット、書き換え可否など）を持つ文字セルが集まったクラスターとして扱われ、これらの属性を組み合わせて画面表示を構成します。
また、「Read Modified」というテクニックにより、ユーザーが変更を加えたフィールドのみを効率的に読み取ることが可能です。これにより、変更されたデータのみを送信することで、データ転送量を大幅に削減します。この方式は、文字単位の割り込み処理に慣れたユーザーにとっては異質に感じるかもしれませんが、現在のWebインターフェースの多くも、同様のデータ転送方式を採用しています。
初期の3270端末にはPFキー（プログラム機能キー）がありませんでしたが、後に12個、さらに24個のPFキーと3つのPAキー（プログラムアテンションキー）がキーボードの上部に搭載されました。これらのキーを押すと、制御ユニット（IBM 3274やIBM 3174など）にI/O割り込みが発生し、キー固有のコードが実行されます。これにより、アプリケーションの機能（終了、ページアップ、ヘルプなど）をワンタッチで呼び出すことができ、プロセッサの負荷を軽減することが可能になりました。
これらの技術革新により、初期の16MBのメモリしか持たない3033メインフレームコンピュータでも、CICS環境下で17,500台もの3270端末をサポートすることができました。
ただし、3270端末はViのような柔軟な操作はできませんでした。Lotus 1-2-3をメインフレームの3279画面に移植する試みも、スプレッドシートのユーザーインターフェースが3279画面の特性に合わなかったため、成功しませんでした。一方で、IBM OfficeVisionのようなオフィスソフトウェアは3270との連携に大きな成功を収めました。これは、そのデザインが3270の特性をよく理解し、長年にわたってPROFS/ODPSカレンダーが世界中のオフィス端末で広く使われていたためです。
現代のWeb技術（HTTP）は、3270と同様に、端末（ブラウザ）がユーザーインターフェースの大部分を担い、サーバー側の負荷を最小限にする仕組みを採用しています。このような観点から見ると、かつての3270端末はダム端末に比べて、よりスマートでプログラマブルなインテリジェント端末であったと言えるでしょう。
IBM 3270のモデル構成
IBM 3270表示端末サブシステムは、表示装置、プリンター、制御装置で構成されています。発表された時期によって、以下の4つの主要な段階に分けられます。
1. 1971年：3271/3271制御装置、3277表示装置、3284プリンターからなる最初の基本サブシステム。
2. 1977年：3276表示・制御装置、3278表示装置など、サブシステム機能の大幅拡張。
3. 1979年：3279カラー・テキスト/カラー・グラフィックス表示装置、3287カラープリンター。
4. 1983/84年：3178低価格表示装置、3179低価格カラー・テキスト表示装置。
表示装置
3277 model 1：16×40文字表示
3277 model 2：24×80文字表示（最大の成功モデル）
3277 model 3：32×80文字表示
3277 GA：RS232C I/Oを搭載した3277（Tektronix 4013または4015グラフィック画面の駆動に使用）
3278 models 3,4,5：アクセント付き文字やデッドキーをサポート
model 2：24×80文字表示
model 3：32×80文字表示
model 4：43×80文字表示
model 5：27×132文字または24×80文字（切り替え可能）
3278 PS：プログラム可能な文字表示機能、モノクログラフィック表示が可能
3279：カラー端末、4色（テキスト）または7色（グラフィックス）表示
3178：低価格端末（1983年）
3179：低価格カラー端末（1984年）
3270 PC：3270端末エミュレーションを含むIBM PCのバージョン（1983年9月リリース）
表示・制御装置
3276：表示・制御装置（リモート制御装置として、最大6台の表示装置を制御可能）
プリンター
3284
3287：カラープリンター
3288：ラインプリンター
制御装置
3271：リモート制御装置
3272：ローカル制御装置
開発と製造
IBM 3270表示端末機サブシステムのアーキテクチャと開発は、主に米国ニューヨーク州のIBMキングストン開発研究所で行われました。プリンターは、同州のエンディコット開発研究所で開発されました。サブシステムの拡張に伴い、日本のIBM藤沢開発研究所（後の大和開発研究所）が3276表示・制御装置、3178表示装置、3179カラー表示装置を開発し、イギリスのIBMハーズレー開発研究所が3279カラー表示装置、3287カラープリンターを開発しました。
製造は、主にキングストンでアメリカ、アジア、オセアニア向けが行われ、エンディコットでプリンターが、イギリス・スコットランドのグリーノックでヨーロッパ向けが行われました。
Telnet 3270 (TN3270)
TN3270は、TCP/IPネットワーク上で3270端末エミュレータを動作させるための、Telnetプロトコルの修正版です。標準的なTelnetクライアントは、TN3270クライアントの代わりとして使用することはできません。これは、両者のプロトコルとエスケープシーケンスが大きく異なるためです。
代表的なTN3270クライアント
IBM Host On-Demand and Personal Communications
Attachmate EXTRA!
QWS3270
Rumba
Reflection
EXTES
参照
IBM 5250表示装置（IBM AS/400接続用）
IBM 2260表示装置（IBM 3270の前身）
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