IRTS

IRTS（Infrared Telescope in Space）は、宇宙科学研究所が開発した日本初の宇宙赤外線望遠鏡です。1995年3月から4月にかけて、宇宙空間での観測を実施しました。

運用

IRTSは、宇宙実験・観測フリーフライヤ（SFU）に搭載され、1995年3月18日に宇宙開発事業団のH-IIロケットによって打ち上げられました。観測は3月30日に開始され、冷却材である超流動液体ヘリウムがなくなる4月26日までの間、全天の7%の領域を、当時としては非常に高い感度でサーベイ観測しました。この観測により、従来の地上観測では捉えられなかった宇宙の姿が明らかになりました。

IRTSを搭載したSFUは、1996年1月13日にスペースシャトル・エンデバー号（STS-72）によって回収されました。この回収作業は、若田光一宇宙飛行士がカナダアームを用いて行いました。

IRTSの観測によって、様々な貴重なデータが得られました。特に重要な成果として、有機物質の微粒子が銀河面の広い領域にわたって存在していることが確認されたことが挙げられます。この発見は、宇宙における有機物の分布や起源に関する研究に大きな進展をもたらしました。

観測装置

IRTSの焦点面には、赤外線の全領域をカバーする以下の4つの観測装置が搭載されていました。これらの観測装置は、超流動液体ヘリウムによって極低温に冷却され、高い感度での観測を可能にしました。

NIRS (Near Infrared Spectrometer)
波長1.4-4.0μmの近赤外線領域をカバーするグレーティング分光器です。星間物質や星形成領域の観測に用いられました。
MIRS (Mid Infrared Spectrometer)
波長4.5-11.7μmの中赤外線領域をカバーするグレーティング分光器です。有機分子やダストの観測に用いられました。
FILM (Far-Infrared Line Mapper)
波長158μmの[CII]スペクトル線、および波長63mmの[OI]スペクトル線の強度を測定するグレーティング分光器です。星間ガスや銀河の構造の研究に用いられました。
FIRP (Far-Infrared Photometer)
波長150-700μmの遠赤外線～サブミリ波領域の強度を測定する測光器です。低温のダストや銀河の観測に用いられました。

参考文献

“IRTS焦点面観測機器”. ISAS. 2010年10月6日閲覧。
“Infrared Telescope in Space”. ISAS. 2010年10月6日閲覧。
奥田治之. “気球・IRTS・ISO--赤外線観測事始”. ISAS. 2010年10月6日閲覧。

関連項目

あかり
SPICA
GREX-PLUS

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