ISCライセンス

ISCライセンスとは

ISCライセンス（Internet Systems Consortium License、ISCL）は、Internet Systems Consortium（ISC）が策定したオープンソースのパーミッシブ・ライセンスです。これは、ソフトウェアの利用、改変、再配布を比較的自由に許可するライセンスの一種であり、2条項BSDライセンスと機能的に非常に似ています。ISCライセンスの最大の特徴は、ベルヌ条約によって不要とみなされる文言を削除し、より簡潔で明確なライセンス条項を実現している点にあります。

歴史的背景

ISCライセンスは、1995年にISCが開発したBINDおよびdigというソフトウェアのために最初に作成されました。当初、これらのソフトウェアの配布を円滑に行うことを目的として、独自のライセンスが設けられました。

2007年、フリーソフトウェア財団（FSF）は、このライセンスを自由ソフトウェアライセンスとして承認するにあたり、ライセンス条項の明確化を求めました。この時、ポール・ヴィクシーはBINDのメーリングリストで、ISCライセンスが電子メールソフトウェアPineの配布を許可しないというワシントン大学の解釈と、それに類似する議論を避けるため、配布条件を「and distribute」から「and/or distribute」に変更しました。

この変更により、配布だけでなく、配布しない選択肢も明確化され、ライセンスの適用範囲がより柔軟になりました。

また、テオ・デ・ラートは、カリフォルニア大学バークレー校で初期に使用されていた、ソースコードの公開・非公開に関わらず再配布を認めるライセンスを選択しました。この両方のライセンス条文について、フリーソフトウェア財団は自由ソフトウェアライセンスとして承認し、ISCライセンスは広く受け入れられるようになりました。

採用事例

ISCライセンスは、数多くのプロジェクトやソフトウェアに採用されています。その代表的な例を以下に示します。

BIND: バージョン9.11.0以前のBINDはISCライセンスを採用しています。BINDは、インターネットの根幹を支えるDNS（Domain Name System）サーバーソフトウェアとして広く利用されています。
ISC DHCP: バージョン4.4.0以前のISC DHCPもISCライセンスで提供されています。DHCPは、ネットワークに接続されたデバイスにIPアドレスを自動的に割り当てるためのプロトコルです。
Kea: バージョン1.0.0のKeaは、より現代的なDHCPサーバーソフトウェアとして開発され、ISCライセンスを採用しています。
OpenBSD: 2003年6月より、OpenBSDプロジェクトはISCライセンスを採用しました。OpenBSDは、セキュリティと正確性を重視したオペレーティングシステムであり、この影響によりISCライセンスは他のプロジェクトにも波及しました。
npm: npm（Node Package Manager）は、JavaScriptのパッケージ管理ツールであり、デフォルトライセンスとしてISCライセンスを採用しています。これにより、JavaScript開発者の間で広く利用されるようになりました。
Qualcomm Atheros: 商業分野では、Qualcomm Atherosの無線ドライバもISCライセンスを採用しています。これにより、様々なデバイスで利用されている無線技術にもISCライセンスが影響を与えています。

ISCライセンスの主な特徴

寛容性: ISCライセンスは、非常に寛容なライセンスであり、ソフトウェアの利用、改変、再配布を比較的自由に許可しています。これは、開発者が自分のプロジェクトでこのライセンスを採用する際のハードルを低くしています。
簡潔性: ライセンス条項が簡潔で読みやすい点が特徴です。これにより、ライセンスの解釈が容易になり、法的なトラブルを避けるのに役立ちます。
互換性: 2条項BSDライセンスと機能的に同等であるため、他のパーミッシブ・ライセンスとの互換性が高いです。これにより、異なるライセンスのソフトウェアを組み合わせる際に便利です。
明確性: ライセンス条文の「and/or distribute」という表現により、配布の義務がないことが明確化されています。これにより、ソフトウェアの利用者は配布するかどうかを自由に選択できます。

ISCライセンスは、その寛容性と簡潔さから、多くのプロジェクトや企業に採用されています。オープンソースソフトウェア開発において、重要な役割を果たしているライセンスの一つと言えるでしょう。

外部リンク

* Internet Systems Consortium's License Text

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