Il-1 (航空機)

イリューシン Il-1: ソ連の重装甲戦闘機

イリューシン Il-1（Ил-1）は、ソビエト連邦のイリューシン設計局によって第二次世界大戦中に開発された重装甲戦闘機です。この機体は、ドイツ軍の最新戦闘機に対抗するため、1943年に設計が開始されましたが、初飛行を行った1944年の時点で、ソ連軍はすでに制空権を確保していたため、実際に運用されることはありませんでした。最終的に、Il-1の試作機はわずか1機のみが製造されました。

開発の背景

Il-1の開発は、ソ連の航空産業における重要な試みの一環でした。セルゲイ・イリューシンは、Il-1の単座型と複座型の両方を設計することに決めました。元々の設計は、既存のIl-2戦闘機を基にしていましたが、さらに近代的でコンパクトなエンジンであるAM-42を搭載し、性能を向上させました。また、要求される防御機能も備えられており、エンジンと操縦士を守るための強固な装甲が装備されました。

Il-1は、主翼の根元に吸気口を設け、これによりオイル冷却器やラジエーターの効果的な配置が可能となり、装甲部分も拡張されました。降着装置のデザインも改良され、後方に引き込まれた際に主翼内部に納まるように設計されています。武装は、Il-2から引き継がれた23mm機関砲2門で、爆弾は最大200kgまで搭載可能でした。また、カセット式対空榴弾も装備できるようになっていました。

初飛行とその後

Il-1は1944年5月19日に初飛行を行い、試験では最高速度580 km/h（約360 mph）を記録しましたが、既に運用されていた他のソ連軍機と比較して特別優れた性能を発揮することはありませんでした。このため、イリューシンは国家側の試験を受けることを決定しませんでした。

また、イリューシン設計局は、Il-1の複座型の機体を地上攻撃機に転用することに決め、最終的にこれはIl-10という型名で知られることになります。Il-10は1944年4月19日に初飛行し、翌月には国家試験において成功を収めることとなります。

Il-1の要目

Il-1の基本的なスペックは以下の通りです。

• - 乗員: 1名
• - 全長: 11.12 m
• - 全幅: 13.40 m
• - 全高: 4.08 m
• - 翼面積: 30 m²
• - 空虚重量: 4,285 kg
• - 運用重量: 5,320 kg
• - エンジン: ミクーリン AM-42 液冷V型12気筒、1,472 kW
• - 最大速度: 580 km/h
• - 巡航高度: 8,600 m
• - 航続距離: 1,000 km
• - 武装: 23mm機関砲×2、爆弾200kg

結論

Il-1は、その開発と初飛行の過程において貴重な技術的イノベーションをもたらしましたが、戦争状況の変化により実戦に投入されることはありませんでした。しかし、この試みを通じて得られた知見は、後のIl-10の成功に大きく寄与したことでしょう。

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