Internet Explorer 9

Internet Explorer 9 について

Internet Explorer 9（IE9）は、マイクロソフトが開発したウェブブラウザで、2011年3月14日に正式版が公開されました（日本語版は4月26日）。IE9は、従来のバージョンから大幅な改善が施され、ユーザーインターフェースの刷新、ウェブ標準への準拠、パフォーマンスの向上が図られました。

主な特徴

ユーザーインターフェース

IE9では、IE7やIE8で導入された検索ボックスとアドレスバーの統合がさらに進み、ステータスバーはデフォルトで非表示になりました。これにより、ウェブサイトの表示領域が拡大され、より多くのコンテンツを快適に閲覧できるようになりました。また、新しいタブを開くと、頻繁に利用するサイトが一覧表示されるようになり、目的のサイトに素早くアクセスできます。

ダウンロードマネージャーが導入され、ダウンロードの履歴や進捗状況が確認できるようになりました。タブの独立機能（ティアオフタブ）により、タブを個別のウィンドウとして表示することも可能です。Windows 7では、タスクバーへのピン留め機能も提供され、お気に入りのサイトに簡単にアクセスできるようになりました。

通知バーの表示方法も改善され、ブラウザフレームの下部にまとめて表示されるようになりました。この通知バーは、ポップアップのブロックやActiveXの動作に関するメッセージだけでなく、ファイルのダウンロード情報も扱うようになりました。

アドオンパフォーマンスアドバイザーが実装され、ブラウザの起動や動作に影響を与えるアドオンの問題を解決できるようになりました。インストールプロセスも簡略化され、ダウンロード後すぐにインストールが開始されるようになりました。インストール中に開いているプログラムを閉じるかどうかを選択するダイアログが表示されるようになり、プログラムを閉じるを選択すると、インストール後にプログラムが自動的に再起動するようになりました。

IE8まで搭載されていたナビゲーション音は、IE9ではデフォルトで無効になっています。

ウェブ標準

IE9は、IE8で進められたウェブ標準への準拠をさらに強化し、HTML5、CSS3、JavaScriptの最新技術に対応しました。

HTML5

HTML5の仕様に基づき、Geolocation API、video、audio、canvas、selectionなどの要素に対応しました。また、section、nav、articleといったセマンティック要素もサポートしています。さらに、Scalable Vector Graphics (SVG) 1.1やDocument Object Model (DOM)の拡張にも対応しました。

CSS

CSS3の各モジュールに優先的に対応し、2D Transforms、Backgrounds and Borders、Color、Fonts、Media Queries、Namespaces、Values and Units、Selectorsなどをサポートしています。CSS2の実装も他のブラウザと比較して高い互換性を達成しました。CSS2.1の互換性テストでは、97.7%の合格率を記録しました。

JavaScript

新しいJavaScriptエンジン「Chakra」が搭載され、処理速度が向上しました。ECMAScript 5th edition (ES5)にも対応し、最新のJavaScript機能を活用できます。

その他の機能

グラフィックス

Direct2DとDirectWriteを使用し、GPUによるハードウェアアクセラレーションに対応しました。これにより、高品質で高速なレンダリングが可能になりました。HTML5 MediaはMedia Foundationによってメディア再生のGPUアクセラレーションに対応しています。

プライバシーとセキュリティ

SmartScreenフィルターが強化され、マルウェアの検出とダウンロード防止機能が向上しました。追跡防止機能が標準で搭載され、ウェブサイトや広告主によるブラウジングデータの収集を防止できるようになりました。

ユーザーエージェント

IE9のユーザーエージェントは、他のブラウザとの相互運用性を向上させるため、Mozilla/5.0に変更されました。従来のIEと比べて簡素化されています。

Google検索バー

IE8まで可能だったGoogle検索バーで検索結果を新しいタブで開く設定は廃止され、常に新しいウィンドウで開くようになりました。

トランジション機能

IE4から搭載されていたページ移動時のビジュアル効果（トランジション機能）は、IE8をもって廃止されました。CSS3やJavaScriptで代替が可能です。

経緯

IE9は、2009年のProfessional Developer Conference (PDC09)で初めて発表されました。開発中のバージョンは、Platform Previewとして数週間おきに開発者向けに公開され、JavaScriptの処理速度向上やウェブ標準への準拠が進められました。2010年9月にはBeta版が公開され、新しいユーザーインターフェースやダウンロードマネージャーが導入されました。2011年2月には製品候補版が公開され、Beta版で採用されたユーザーインターフェースの改善やW3C Geolocation API、追跡防止機能への対応が行われました。そして、2011年3月14日に正式版が公開されました（日本語版を除く）。日本語版は、3月11日の東日本大震災の影響で公開が遅れ、4月26日に公開されました。

一部の環境では、Adobe Flash Playerとの不具合がありましたが、アドビが修正版を配布しました。

まとめ

Internet Explorer 9は、ウェブ標準への対応を強化し、ユーザーインターフェースを改善したウェブブラウザです。高速な処理と安全なブラウジング環境を提供し、ユーザーエクスペリエンスの向上に貢献しました。HTML5、CSS3、JavaScriptの最新技術に対応し、モダンなウェブサイトを快適に閲覧できるようになりました。

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