J.B.ハロルドシリーズ

『J.B.ハロルドシリーズ』は、リバーヒルソフトおよびアルティからリリースされている、架空の警察官J.B.ハロルドを主人公としたアドベンチャーゲームのシリーズです。その最大の特徴は、当時の技術で実写に迫るほどリアルに描き込まれたグラフィックと、事件の背後にある登場人物たちの複雑な人間関係を深く掘り下げた、読み応えのあるシナリオにあります。

歴史

シリーズは1980年代から1990年代にかけて、主にPC-9801などのパーソナルコンピューター向けタイトルとして世に登場し、その革新的な表現と緻密な物語で多くのユーザーから支持を得てシリーズ化されました。その後、人気を受けてPCエンジンやファミリーコンピュータといった家庭用ゲーム機へも積極的に移植され、さらに広い層に認知されることになります。

開発元であるリバーヒルソフトが事業を停止した後は、アルティが本シリーズの版権を継承しました。アルティのもとでは、携帯電話アプリやニンテンドーDSといったプラットフォームで新たな事件を描いた作品がリリースされる一方、かつてリバーヒルソフトが手掛けた往年のパソコン向けタイトルが復刻されるなど、シリーズは形を変えながらも展開を続けています。

主な作品

本シリーズでは、主人公J.B.ハロルドが様々な難事件に挑みます。代表的なタイトルをいくつか紹介します。

殺人倶楽部（マーダークラブ）

シリーズの記念すべき第1作として、1986年 8月に発売されました。リバティタウン郊外にある大学の駐車場で発見された、会社社長ビル・ロビンズの刺殺事件にJ.B.が挑みます。わずかな証拠を糸口に真相へと迫る物語は、多くのプレイヤーを引きつけました。オリジナル版はPC各機種で展開され、その後もファミリーコンピュータ、PCエンジンCD-ROM²、ニンテンドーDS、iOS、Android、Nintendo Switchなど、非常に多くのプラットフォームに移植されています。また、プロジェクトEGGによるPC版の復刻配信や、Nintendo Switch向けEGGコンソールでの配信も行われています。

マンハッタン・レクイエム

1987年 7月に発売された第2作。舞台は一転して大都会ニューヨークのマンハッタンです。当初は限られた範囲での捜査となりますが、関係者への聞き込みなどを進めることで行動範囲が徐々に広がっていくシステムが特徴でした。LD-ROM²版では実写映像が導入され、崩壊前のワールドトレードセンターが映っていることでも知られます。こちらも多くのPC機種に加え、MSX2、LD-ROM²、ニンテンドーDS、iOS、Android、Nintendo Switchに移植・復刻されています。

キス・オブ・マーダー

作品番号としては第3作に当たりますが、内容は番外編的な位置付けとされています。『マンハッタン・レクイエム』のグラフィックデータを活用しつつ、シナリオを新たに構築したため、前作のキャラクターが異なる役柄で登場するスター・システムが採用されています。1987年に発売され、プレイには『マンハッタン・レクイエム』のディスクが必要でした。ニューヨーク・グリニッジビレッジで発生した若い女性サラ・シールズ殺害事件と、彼女が預かっていたという多額の保険金がかけられた巨大なサファイアの行方を追う物語です。元刑事の保険調査員ジャドからの依頼を受け、J.B.が捜査に協力します。MSX2版やニンテンドーDS版（『マンハッタン・レクイエム』とのセット）として移植された他、プロジェクトEGGやNintendo Switchでも復刻されています。

D.C. コネクション

1989年に発売された、正式なナンバリング第3作。J.B.は上司の殺害事件の捜査のため、10年ぶりにワシントンD.C.を訪れます。PC各機種でリリースされ、すべてプロジェクトEGGにて復刻配信されています。

ブルー・シカゴ・ブルース

1994年12月にLD-ROM²で発売された第4作。物語の舞台はシカゴ。同僚の女刑事が殺人事件を起こした後に自殺した事件の真相を追うため、J.B.が奔走します。この作品の大きな特徴として「時間」の概念が導入された点が挙げられます。聞き込みや移動など、J.B.の行動によって時間が経過し、捜査可能な時間は朝8時から夜11時半までと限られています。また、ゲーム開始から4日以内に犯人を見つけ出さないとゲームオーバーとなる緊張感のあるシステムでした。この作品はシリーズ一時中断前の最終作となり、以降の携帯アプリ作品はすべて過去の事件を描いています。LD-ROM²版以降も、メガLD、セガサターン、3DO、PlayStation、PC-FX、Windowsと多くのプラットフォームに移植されました。

携帯アプリ以降の作品

シリーズ再開後、携帯電話アプリ向けに新たな事件が描かれました。2006年には約11年ぶりの新作となる第5作『シアトル・パープル・ヘイズ』が配信され、時系列的には『マンハッタン・レクイエム』と『D.C. コネクション』の間の事件と位置づけられています。同年には第6作『サンフランシスコ・ブラック・ベル』、翌2007年には第7作『孤立する死者 -BOSTON SOLITARY CORPSE-』が配信されました。これらの作品は、かつてのPC版シリーズの雰囲気を引き継ぎつつ、新たな事件を描いています。また、各事件で脇役として登場したキャラクターを主人公とする、事件の前日談を描いた携帯電話アプリ小説も配信されるなど、多角的な展開が行われました。

『J.B.ハロルドシリーズ』は、そのリアルなグラフィックと深みのあるシナリオによって、アドベンチャーゲームの歴史に名を刻むシリーズと言えるでしょう。様々なプラットフォームで展開されているため、過去の名作や新たな事件に触れる機会も提供されています。

（※）文中の発売年や価格、対応機種は、初出または代表的なものの一部を記載しています。移植版によっては仕様が異なる場合があります。

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