JIVE JIVE

CASIOPEA 『Jive Jive』

日本のフュージョンバンドとして国内外で高い評価を得ているカシオペアが、通算10枚目のオリジナルアルバムとして世に送り出したのが『Jive Jive』（ジャイヴ・ジャイヴ）です。この作品は1983年に発表され、当時の彼らの円熟期における挑戦的な一面を垣間見せる重要なアルバムとして位置づけられています。

演奏陣：CASIOPEAメンバーと多彩なゲスト

『Jive Jive』のサウンドを構築するのは、バンドの不動のラインナップである野呂一生（ギター）、向谷実（キーボード）、櫻井哲夫（ベース）、神保彰（ドラム）の4人です。彼らはそれぞれが卓越した技術を持ち寄り、カシオペアならではの高速ユニゾンや複雑なリズムパターンを織りなしています。

リーダーである野呂一生は、愛用のヤマハSGシリーズ（SG Original, SG 3000）に加え、革新的なフレットレスギター（GS-1000 Fretless）やKORGのギターシンセサイザーX-911を駆使し、サウンドに多様なテクスチャーを与えています。また、一部楽曲ではパーカッションやボーカルも担当し、マルチプレイヤーとしての顔も見せています。向谷実は、当時最新鋭だったデジタルシンセサイザーYAMAHA DX-7やGS-1、往年のアナログシンセサイザーCS-70M、ROLAND Jupiter 6など、様々なキーボードを使い分け、楽曲に奥行きと色彩を加えています。櫻井哲夫は、ヤマハBB-2000「Milk Bass」やKramerのベースで、時にメロディアスに、時に力強くボトムを支えます。神保彰は、ヤマハYD-9000シリーズのドラムセットに加え、Simmons VやAmdek Percussion Synthesizerといった電子パーカッションを取り入れ、その正確無比かつダイナミックなドラミングでサウンドに推進力を与えています。さらに、野呂と神保は当時登場したばかりのLinn Drum Computerを使用し、リズムメイクに新たなアプローチを試みています。

本作の特筆すべき点は、カシオペア本体の演奏に加え、数多くの外部ミュージシャンが招かれていることです。Ki-Ki Dee、Mae Mckenna、Jackie Challenok、Lorenza Johnsonといったボーカリストたちが参加し、インストゥルメンタル中心であったカシオペアのサウンドに新たな可能性をもたらしています。特に、Mae Mckenna、Jackie Challenok、Lorenza Johnsonは複数曲に参加しており、ボーカルパートがアルバムの重要な要素の一つとなっています。また、ゲーリー・オズボーンとStuart Brooks（トランペット）、Phill Todo（サクソフォーン）、Pete Beachill（トロンボーン）によるブラスセクションが楽曲に厚みと華やかさを加えています。彼らの参加により、ホーンアレンジが効果的にフィーチャーされ、楽曲に躍動感を与えています。一部のブラスアレンジはRichard Nilesが担当し、洗練された響きを実現しました。さらに、Drachen Theakerによるタブラの演奏が、予測不能なリズムの彩りをもたらしています。

制作体制とアートワーク

このアルバムの制作は、強力なスタッフ陣によって支えられました。エグゼクティブ・プロデューサーは、当時日本の音楽業界で大きな影響力を持っていた村井邦彦氏と、Edward Leaman氏（アシスタント）が担当しました。レコーディングはリチャード・マナリング、アシスタント・エンジニアはスティーヴ・トラベルが手掛け、メンバーのタイトな演奏を見事に捉えています。マスタリングはGordon Vicaryが担当し、最終的なサウンドの質を高めました。A&Rディレクターは宮住俊介氏が務めています。

アルバムの視覚的な側面であるアートワークも重要です。アート・ディレクターおよびカバー・デザインはKaoru Watanabeが担当し、Hiroyasu Yoshioka、Katsunori Hironakaもデザインに貢献しています。特に印象的なカバー・ドローイングは、ギタリストの野呂一生自身が手掛けたものであり、彼の多才ぶりと作品への深い関わりを示しています。

リリースとその後の展開

『Jive Jive』は、当時のフュージョンシーンにおいて、カシオペアが単なる技巧派インストゥルメンタルバンドに留まらず、音楽的な幅を広げようとする意欲を示した作品として受け入れられました。そのサウンドは多くのファンを魅了し、バンドの代表作の一つに数えられています。時代を経て、このアルバムは様々な形態で再リリースされており、例えば2016年7月27日には鈴木浩二氏によってリマスタリングされたハイレゾ版がリリースされ、現代のオーディオ環境においてもその高品質なサウンドを楽しむことができるようになっています。

このアルバムに関する情報は、当時のバンドスコア（中央アート出版社、ジャパン・ミュージックワークスなどから出版）をはじめ、様々な文献やオンラインリソースに記載されています。CDジャーナルの商品データベース、DiscogsやMusicBrainzといった音楽情報サイト、あるいは音楽愛好家によるブログ記事などでも、この作品に関する詳細や評価を確認することができます。これらの情報源は、『Jive Jive』が日本の音楽史においてどのように位置づけられ、ファンにどのように語り継がれているかを知る上で役立ちます。

『Jive Jive』は、カシオペアの高度な演奏力と、ボーカルやブラスといった外部要素を巧みに取り入れたアレンジが見事に融合した作品であり、バンドのキャリアにおける多様性と挑戦を示す重要な一章と言えるでしょう。

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