JLGフィルム

JLGフィルム：ゴダール監督作品の中核を担った製作会社

JLGフィルムは、巨匠ジャン＝リュック・ゴダール監督が設立したフランスの映画製作会社です。1979年、ゴダール監督とアンヌ＝マリー・ミエヴィル氏がスイスのロールに移住したことをきっかけに設立されました。設立の直接的な動機は、ゴダール監督が商業映画への復帰作である『勝手に逃げろ/人生|勝手に逃げろ_人生』の製作資金を得るため、フランス国立映画センターへの助成金申請に必要となるプレゼンテーションビデオの制作でした。このプレゼンテーションビデオ『「勝手に逃げろ/人生|勝手に逃げろ_人生」のシナリオ』が、JLGフィルムの最初の作品となりました。

その後、JLGフィルムはゴダール監督作品だけでなく、ミエヴィル氏の監督作品も手掛けます。1982年には『「パッション」のためのシナリオ』を製作し、『パッション』本編にも出資しました。これは、ゴダール監督とミエヴィル氏が共同で設立していた製作会社ソニマージュとの共同製作でした。ソニマージュ社は『パッション』の完成をもって役割を終え、JLGフィルムが中心的な製作会社としての役割を担うことになります。

JLGフィルムは、ゴダール監督作品を支えるハウスプロダクションとしての性格が強く、小回りの利く制作体制が特徴です。他の製作会社との共同制作も多く、サラ・フィルム、ペガーズ・フィルム、ザナドゥ・フィルム、ゴーモンなど、様々な会社と連携して作品を制作しました。代表的な作品には、『カルメンという名の女』(1983年)、『こんにちは、マリア』(1985年)、『ゴダールの探偵』(1985年)、『右側に気をつけろ』(1987年)などがあります。これらの作品は、1980年代のフランス映画界において、ゴダール監督の独自のスタイルと高い人気を反映したものでした。また、ミエヴィル氏の単独監督作品である『私の愛するテーマ』(1988年)なども製作しています。

特筆すべきは、1980年代後半から1990年代にかけて制作された『ゴダールの映画史』シリーズです。このシリーズは、ゴダール監督が長年に渡って取り組んだ大規模なプロジェクトであり、JLGフィルムは、このシリーズの制作に専念しました。この期間中は、他の作品製作は行わず、ゴダール監督の創作活動のみに集中したと言えます。『ゴダールの映画史』シリーズは、映画史における重要な作品群であり、JLGフィルムの貢献は多大なるものだったと言えるでしょう。 『ゴダールの映画史』シリーズは、2016年現在、JLGフィルムの最後の作品となっています。

JLGフィルムは、ゴダール監督の頭文字から命名されましたが、その命名の由来には、ヌーヴェルヴァーグの先駆者であるクロード・シャブロル監督が設立したAJYMフィルムへのオマージュが込められています。AJYMフィルムは、シャブロル監督の家族のイニシャルから命名されたものであり、シャブロル、リヴェット、ロメールといったヌーヴェルヴァーグの巨匠たちがデビュー作を制作した会社でした。ゴダール監督は、AJYMフィルムの成功を間近で見ていたことから、自身の製作会社にも同様の命名方法を採用したと考えられます。

JLGフィルムは、ゴダール監督の才能とビジョンを支え、フランス映画史に数々の名作を残した、重要な製作会社としてその名を刻んでいます。その活動は、単なる映画製作にとどまらず、ゴダール監督の芸術的探求を具現化する上で不可欠な役割を果たしたと言えるでしょう。

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