JR貨物クキ900形貨車

JR貨物クキ900形貨車

JR貨物クキ900形貨車は、1989年に1両のみ試作された、タンクローリーピギーバック輸送用の貨車です。これは、従来の石油輸送における課題を解決するために開発されました。

開発の背景

1980年代、名古屋工業地帯では石油製品の輸送需要が増大していました。しかし、従来の鉄道輸送では油槽所が必要であり、コストや効率の面で課題がありました。そこで、タンクローリーをそのまま貨車に載せて輸送する「ピギーバック輸送」が検討されるようになりました。

1985年には、国鉄、石油会社、日本車輌などが参加する研究会が発足し、タンクローリーピギーバック輸送に関する研究が開始されました。研究の結果、当時最大級の20キロリットルタンクローリーを鉄道輸送することで、道路輸送と比較してコスト的なメリットがあることが判明しました。

当初はチキ6000形貨車を改造して実験が行われました。1987年には、チキ6358とチキ6316の2両が改造され、20キロリットルセミトレーラータンクローリーを1両に1台搭載する試験が行われました。簡単な緊締装置や固定装置が設置され、名古屋臨海鉄道で走行試験が行われた結果、基本的な問題がないことが確認されました。この試験結果を踏まえ、本線での走行試験を行うために、コキ1000形貨車を改造してクキ900形が製作されました。

構造

クキ900形は、全長16,320mm、全幅2,692mm、全高1,202mm、自重20t、荷重27tというサイズです。車体はコンテナブルー、台車は灰色1号で塗装され、試作された1両にはクキ900-1という番号が与えられました。

車体は基本的にコキ1000形の構造を踏襲しており、連結部には大型の緩衝器が設けられています。コンテナ用の緊締装置は撤去され、タンクローリーのタイヤガイドと緊締装置が設置されました。台車は種車と同じTR215F形を使用し、ブレーキはASD方式空気ブレーキと留置ブレーキを備えています。

荷役は、ランプウェイを使ってタンクローリーが自走して貨車に乗り込み、積み降ろしを行います。トレーラーヘッド付きのトレーラーを1台搭載することができ、当時の消防法では、石油を積載した状態のトレーラーからヘッドを切り離すことが禁止されていたため、ヘッドごと搭載する仕様となりました（後に鉄道輸送時に限り緩和）。

試験

1988年7月には、東室蘭-北見間で輸送試験が行われました。ガソリンと灯油を合計20キロリットル積載したタンクローリーを搭載し、85km/hで本線上を走行し、高速走行時の振動が道路走行時よりも少ないことが確認されました。

この試験結果を受けて、クキ900形をベースとしたタンクローリーピギーバック輸送の実用化が進められることになりました。

廃車と現状

試験後、クキ900形は長らく放置されていましたが、2000年に廃車となりました。しかし、2013年現在でも解体されずにJR貨物鷲別機関区輪西派出で保管されているのが確認されています。

参考文献

渡辺 一策『RM LIBRARY 84 車を運ぶ貨車（下）』ネコパブリッシング、2006年。

関連項目

JR貨物の車両形式

外部リンク

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