Ju 86 (航空機)

Ju 86: ドイツの多用途航空機

Ju 86は、ドイツの航空機製造会社ユンカースによって設計された多用途航空機です。この機体は単葉の爆撃機および民間用旅客機としての機能を持ち、特に第二次世界大戦の初期においては高高度爆撃機および偵察機としても成功を収めました。Ju 86Pというモデルは、排気タービン過給器を備えたディーゼルエンジンと与圧室、そしてアスペクト比が大きい主翼を搭載していました。

開発の背景

1930年代前半、ドイツはヴェルサイユ条約の影響で制約を受けつつも、民間機の名義を利用して航空機の開発を行っていました。1934年、ドイツ政府はユンカース社とハインケル社に新型爆撃機の開発を指示。しかし、ハインケル社が開発したHe 111が後にドイツ空軍の主力になるのに対して、Ju 86はその開発条件の一環として軍用機と民間機の設計を同時に進める必要がありました。

ユンカース社は1934年11月に軍用型の試作機を、翌年の1月には民間型の試作機を初飛行させることに成功。最初はジーメンス製の空冷エンジンが搭載され、その後ユンカース製の水冷エンジンに切り替えられました。テストの結果、初期モデルには操縦性の問題もありましたが、最終的には軍用型と民間型の量産が決定されました。

各タイプの概要

民間型

Ju 86の民間型は多様な仕様があり、B型では最大10人の乗客を運ぶことができました。C型はストレッチ型として知られ、より多くの旅客を収容できるように設計されています。また、輸出用には仕様の異なるZ型も存在しました。これらの機体はスイス航空やルフトハンザ航空をはじめ、様々な航空会社によって運用され、第二次世界大戦中に多くが軍に徴用されました。

爆撃機型

軍用型の初号機はJu 86A-0で、続いて量産型のJu 86A-1が登場します。これらはディーゼルエンジンを搭載し、爆弾や防御火器を装備していました。しかし、A型は縦の安定性に問題があり、尾部構造の改善が求められた結果D型が開発され、スペイン内戦で使用されました。しかし、整備の難しさと機体の脆弱性から生産は縮小されました。

その後、エンジンを変更したE型が生産開始され、総生産数は450機から520機とされています。1940年には、長大な主翼と与圧室を備えた高高度用のP型も登場し、主に偵察活動に使用されましたが、ドイツ空軍の迎撃機との性能差から次第に運用が難しくなりました。

輸出型

Ju 86は多くの国に輸出されました。主な輸出先にはスウェーデン、南アフリカ、チリ、ポルトガル、ハンガリー、満洲（当時の日本の影響下にあった地域）などがあり、これらの国では輸出モデルがライセンス生産されました。特にスウェーデンのSAABでは多数の機体を生産し、1956年まで運用しました。

スペック

• - G-1型

全長: 17.20 m
全幅: 22.60 m
全高: 4.70 m
エンジン: BMW 132N 空冷星型9気筒 860hp × 2
最大速度: 360 km/h
航続距離: 1,400 km
武装: 7.92 mm機銃 × 3, 爆弾 1,000 kg
乗員: 4名

• - R-1型

全長: 16.40 m
全幅: 32.00 m
全高: 4.70 m
エンジン: ユンカースJumo207B-3 水冷6気筒 950hp × 2
最大速度: 420 km/h
航続距離: 1,577 km
武装: なし
乗員: 2名

Ju 86は多面的な特性を持ち、時代と共に進化を遂げながら、各国で利用され続けた特異な航空機の一つです。

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