Ju 90 (航空機)

ユンカース Ju 90の概要

ユンカース Ju 90は、第二次世界大戦前にルフトハンザ航空によって短期間運用されていた旅客機です。この機体は、ユンカースJu 89爆撃機を元に開発されましたが、試作モデルの段階を超えることはありませんでした。正規の軍用機として利用されたのは、主にドイツ空軍の軍事輸送のためであり、大日本帝国陸軍もこの機体に関心を持っていましたが、実際に購入するには至りませんでした。

設計と開発の背景

Ju 90の設計は、長距離戦略爆撃機としての要請から生まれました。これは、職務機としての役割を持つユンカース Ju 89に基づいており、ドイツ航空省はより小型かつ速い機体を求めていました。これにより、Ju 89の開発は1937年に中止されましたが、ルフトハンザ航空はこの機体のメリットを認識し、旅客機の設計へとシフトしました。

1938年、ルフトハンザ航空によって初めてJu 90が実用化されました。この機体は、4発エンジンを持ち、全金属製の低翼単葉設計が特徴です。特に主翼は後退角が付き、滑らかな表面処理が施されていたため、空力特性が優れていました。また、機体の胴体は円形断面で、客室には最大40名の乗客を収容できるスペースが提供されていました。

プロトタイプとその特徴

初期の試作機、Ju 90 V1は820kWのエンジンを搭載し、1937年に初飛行を行いましたが、その後に発生した事故により運用は続きませんでした。次の試作機V2は、BMW製のより出力が低いエンジンに変更された結果、安定性を持たせることができました。この機体もまた、熱帯環境での運用テスト中に墜落してしまいます。

さらに、ルフトハンザ航空は量産型のA-1を発注しましたが、添加的に生産される計画にはいくつかの問題が発生しました。南アフリカ航空からの注目も受けましたが、最終的にはドイツ空軍の手に渡る結果となりました。

軍用型の開発へ

Ju 90は民間だけでなく、軍事用途でも開発が進められました。RLMはJu 90を基にした軍用輸送機の開発を求め、改良型が生まれました。これにより、試作機はより強力なエンジンと強化されたフレームなどが追加され、運用能力が向上しました。

Ju 90 V5とV6の試作機は、新しい主翼設計と強化された降着装置を持ち、実用に向けた強化が施されました。最終的には新たに改良が加わり、Ju 290へと進化したことが特徴的です。

日本陸軍の関心

日本陸軍も本機を検討しました。1938年2月には、九二式重爆撃機の後継機として「仮称キ90」としてJu 90を考えており、具体的には10機の製造をユンカース社に依頼しました。しかし、交渉は難航し、結局正式な契約には至りませんでした。

戦争における運用と現存機

最終的に製造されたJu 90の合計は18機であり、戦争を生き延びたものも存在しますが、これらの機体は概ねスクラップとしての運命をたどりました。戦争の始まりから終息までの時間は短いものでしたが、Ju 90はその独自の設計と用途によって、当時の航空機の歴史の中で特異な存在となりました。現在では全ての実機が消失しており、現存するモデルは存在しません。

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