Jw cad

Jw_cad：2次元汎用CADの進化と普及

Jw_cadは、2次元汎用CADソフトウェアであり、その名称は開発者である清水治郎氏のイニシャル「J」と、田中善文氏のペンネーム「悪文（わるふみ）」のイニシャル「W」に由来します。当初はPC-9801やPC/AT互換機|PC_AT互換機のMS-DOS上で動作するソフトウェアとして登場し、その後Windows版がリリースされました。

DOS版：黎明期のJw_cad

DOS版Jw_cadは、ドラフターや製図板の延長線上にある汎用CADを目指して開発されました。開発初期から多くのユーザーの意見を取り入れ、現在の形に近づきました。特に、建築士が開発に関わっている点やフリーウェアである点、軽快な操作性が評価され、中小の設計事務所を中心に広く普及しました。当時の市販CADソフトと比較しても操作性に優れ、パソコン通信によるサポートも充実していたため、1993年にはJw_cadを特集したムックが4万部を売り上げるほど人気を博しました。

しかし、フリーソフトであるがゆえに、市販CADソフトメーカーから脅威とみなされ、日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会で意見交換が行われる事態にも発展しました。Jw_cadは建築業界だけでなく、電気や水道など施工図を必要とする業界にも普及し、積算見積システムや資材拾い出しソフトにも対応するなど、その影響力は大きくなりました。

DOS版では、JWCとDXF形式の図面ファイルを扱うことができ、特にJWC形式は仕様が公開されているため、多くのCADや関連ソフトで読み書きが可能でした。ただし、ハードウェアの制約から座標データが単精度実数で扱われていたため、倍精度実数で扱うCADで読み込むと、わずかながら数値誤差が発生するという課題も抱えていました。1999年1月にリリースされたVer2.22Hをもって開発は終了し、Windows版に開発が移行しました。

Windows版：進化するJw_cad

Windows版Jw_cadは、DOS版の軽快な操作性を継承しつつ、多くの新機能が追加されました。バージョン3.51Cまでは「Jw_cad for Windows」という名称でしたが、バージョン4.00以降は「Jw_cad」という名称になりました。ユーザー間では「JWW」や「Jw_win」などの呼称も用いられます。

Windows版では、JWC、JWW、DXF、SXF、P21形式の図面ファイルを扱うことができ、JWW形式が基本となっています。複数のバージョンが存在し、新しいバージョンのファイルを古いバージョンで読み込むことはできません。また、JWWの普及率の高さを表すように、市販CADの中にはJWWデータの読み書きができるものも多く存在します。

1997年7月にVer0.01が配信されましたが、初期はDOS版がWindows上で問題なく動作したため、開発は緩やかでした。しかし、DOS版の開発が終了した1999年以降、開発が活発化し、2000年1月1日にはVersion 1.00が発表されました。バージョンアップを重ねるごとに、時計の文字盤を模した操作メニュー「クロックメニュー」の実装や図面データの倍精度浮動小数点数化、面図形、天空図作成など多くの機能が追加・改良されました。Version 8.00からはWindows 8シリーズのタッチパネル操作にも対応し、Version 8.10からはMicrosoft社のSurface Dialにも対応しています。

外部変形の魅力

Jw_cadの大きな魅力の一つとして、外部変形という拡張機能があります。これにより、ユーザーは様々な付加機能を得ることができます。フリーソフトであるため、インターネット上には膨大な数の「外部変形」が蓄積されており、Jw_cadの可能性を大きく広げています。主なタイプとしては、以下のようなものが挙げられます。

画面上に迅速に作図するタイプ：木造平面図の描画などが該当します。
画面上のデータを集計するタイプ：図面上の文字列や線長さを検索し、個数や長さを集計します。
* 画面とは関係なく裏で自動計算するタイプ：鉄骨二次部材などの断面算定を行います。

まとめ

Jw_cadは、その誕生から30年近く経つにもかかわらず、現在でも多くのユーザーに利用され続けています。DOS版からWindows版へと進化し、豊富な機能と軽快な操作性、そしてユーザーコミュニティによって支えられてきました。フリーソフトでありながら、業務に十分な性能を持ち、多くの設計者にとって欠かせないツールとなっています。

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