Kh-22 (ミサイル)

Kh-22: ソ連開発の空対艦ミサイル

Kh-22（ロシア語: Х-22）は、ソビエト連邦のラドゥガ設計局によって開発された長射程空対艦ミサイルです。このミサイルは、アメリカ国防総省（DoD）によってAS-4、NATOのコードネームでは「キッチン」として知られています。Kh-22は主にアメリカ海軍の航空母艦と、その空母打撃群を標的とするために設計されており、高速で目標に接近することから「空母キラー」とも呼ばれています。通常弾頭と核弾頭の両方が用意されているこのミサイルは、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の際には、空対地ミサイルとしても使用されました。

開発の背景

Kh-22の開発は、1940年代後半から1950年代初めにかけて行われました。この時期、軍事研究者たちは、今後の海戦では大型艦隊での戦闘が主流ではなくなり、遠距離からの攻撃手段の重要性が高まると考えました。そのため、巡航ミサイルが従来の航空爆弾や航空魚雷に代わって、敵艦に対する攻撃手段になると見込まれました。ソビエト空軍と海軍航空隊は、爆撃機をミサイル運搬手段として転換することを決定し、Kh-22はその一環としてラドゥガ設計局により開発されました。

構造と性能

Kh-22は、Isayev製の液体燃料ロケットエンジンを搭載しており、TG-02（Tonka-250）を燃料として使用し、抑制赤煙硝酸を酸化剤としています。このミサイルは、最大でマッハ4.6の速度に達し、射程は600km（320海里）です。また、高高度飛行と低高度飛行の2つのモードがあり、高高度モードでは27,000mまで上昇し急降下で目標に接近します。一方、低高度飛行モードでは12,000mまで上昇し、マッハ3.5での接近を行います。

Kh-22は、飛行中に電波高度計とジャイロ・スタビライザーを用いたオートパイロットで飛行し、終末航程ではアクティブ・レーダー・ホーミング（ARH）方式での誘導が行われます。試射時には、1,000kgの成型炸薬弾頭を使用し、直径5m、深さ12mの穴を作る能力があります。

運用実績

Kh-22は1962年から運用が開始され、主にTu-22M「バックファイア」を発射プラットフォームとして利用しました。また、Tu-22KやTu-95K-22も運用されました。2022年のウクライナ侵攻の際、Kh-22はウクライナへの攻撃に使用され、一部では住宅地に着弾する不正確さが問題となりました。特に、2022年6月にはクレメンチュクでの軍事施設への攻撃時に隣接するショッピングセンターに着弾し、18人以上が死亡した事例が報告されています。ウクライナ当局は、2023年の時点で210発以上のKh-22が使用され、その命中精度の低さが懸念材料とされています。

さまざまなバリエーション

Kh-22には複数の派生型が存在します。最初は通常弾頭のKh-22と、核弾頭を搭載したKh-22Nの2種類が生産されました。その後、1970年代半ばには対レーダーミサイルのKh-22Pが追加され、さらなるアップグレード版としてKh-22MとKh-22MAが開発されました。これらのアップグレードされたバージョンでは、攻撃プロファイルの多様化や射程延長、データリンクによる誘導の更新が行われています。また、Kh-32という新型ロケットモーターと新型シーカーヘッドを採用した後継機も、現在に至るまでTu-22M3向けに供給されています。

現在の運用状況

Kh-22は、現在ロシア連邦軍の一部として運用されています。過去にはソビエト連邦やウクライナでも使用されており、特にウクライナはTu-22Mの廃棄に伴い、423発を廃棄したとされています。ロシアへの債務返済として、300発以上がウクライナから引き渡されているという報道もあります。このように、Kh-22はその開発から現在に至るまで、様々な形での運用が続けられています。

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