Kh-35 (ミサイル)

Kh-35ミサイルの概要と性能

Kh-35は、ロシア連邦軍が運用する空対艦ミサイル（ASM）で、そのDoD識別番号はAS-20、NATOコードネームは「カヤック」です。また、艦対艦ミサイル（SSM）型は3M24ウラン（NATOコードネーム：SS-N-25 スイッチブレード）、地対艦ミサイル型は3K60バル（NATOコードネーム：SSC-6 ストゥッジ）として知られています。このミサイルは地上目標に対する攻撃も行え、地対艦ミサイル型の射程は最大260キロメートルに達します。性能やサイズがアメリカのハープーンミサイルと類似しているため、西側諸国では「ハープーンスキィ」という愛称でも呼ばれています。

開発の背景

ソ連海軍は、長射程と短射程の2タイプの対艦ミサイルを整備する方針を採っていました。その中で、Kh-35は短射程ミサイルの系譜に位置づけられ、従来のP-15（SS-N-2）の後継として開発されました。ソ連では新たに第2世代短射程ミサイルであるP-270（SS-N-22）が開発されましたが、このミサイルは重量が大きくその威力ゆえに大規模輸出が困難でした。そのため、P-15を完全に代替する機種を開発する必要がありました。Kh-35は、P-270よりも軽量で、輸出に適したモデルとして設計されたのです。

また、従来の艦対艦ミサイルはチェロメイ設計局やラードゥーガ設計局によって設計されてきましたが、Kh-35は空対地ミサイルを専門としていたズヴェズダ・ステラによって開発されました。このため、従来の艦対艦ミサイルとは異なる革新的な設計が施されています。

機能および性能

Kh-35の基本設計はアメリカのハープーンに似ていますが、サステナーにはターボファンエンジンを採用しています。ブースターなしのASMモデルでは480キログラム、ブースターを搭載したSSMモデルでは630キログラムという軽量化を実現しました。飛翔速度は亜音速で、巡航高度はわずか5から10メートル、最終段階では3から5メートルの高度に降下し、アクティブ・レーダー・ホーミング方式で目標を捕捉します。また、データリンク機能によって中途で目標情報の更新も可能です。さらに、成型炸薬弾頭を搭載しており、対地攻撃モードも備えているため、対地攻撃にも使用できます。

90年代後半に米国のボーイング社はハープーンミサイルの次世代モデル「ブロックII」に対地攻撃モードを追加しました。それに対抗する形でKh-35も対地攻撃能力を有するように開発されました。

実戦投入

2022年にロシアがウクライナに侵攻した際、Kh-35は地対地ミサイルとしても使用されました。ウクライナ空軍の報道官は、このミサイルが小型でレーダー探知が難しい特性を有していることを指摘しています。これにより、対抗が難しい兵器としての性格を持っています。

発射プラットフォーム

Kh-35はさまざまなプラットフォームから発射可能で、以下のような艦艇や航空機に搭載されています。

• - 艦艇

インド: デリー級駆逐艦、ブラマプトラ級フリゲート、ヴィール級コルベット
ベトナム: BPS500級ミサイル艇
ソビエト連邦/ロシア: マトカ型ミサイル艇、一部艇に試験装備、スメトリーヴイ、ヤロスラフ・ムードルイ、ステレグシュチイ級フリゲート、ウダロイ級駆逐艦「マーシャル・シャポシニコフ」

• - 航空機

MiG-21、MiG-29SMT、Su-30、Su-35、Ka-27、Ka-28

関連項目

西側諸国でのKh-35の影響力やその技術をモデルにして、ウクライナのルチ設計局が設計したネプチューン巡航ミサイルについても興味深い情報です。このネプチューンは、最初からGPS機能が搭載されており、ウクライナによる対地攻撃にも使用されています。

Kh-35はその多用途性や高性能から、現代の戦場における重要な兵器の一つとなっています。

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