LAMPS

LAMPS（軽空中多目的システム）とは

LAMPS（Light Airborne Multi-Purpose System：軽空中多目的システム）は、アメリカ海軍が運用する艦載ヘリコプターシステムです。対潜戦を主目的としつつ、軽輸送、連絡、観測など、多様な任務に対応できる多目的性が特徴です。ここでは、その開発経緯、各モデルの詳細、そして技術的進歩について解説します。

開発の背景

アメリカ海軍は、ソ連の新型潜水艦に対抗するため、長射程の対潜兵器を必要としていました。当初は無人ヘリコプターDASH（Drone Anti-Submarine Helicopter）を開発しましたが、信頼性の問題やソナー能力の限界から運用を終了しました。その後、有人ヘリコプターによるシステム開発に舵を切り、LAMPSが誕生しました。

イギリス海軍やフランス海軍も同様の課題に直面し、それぞれ有人ヘリコプターを用いた対潜システムを開発しました。これらを踏まえ、アメリカ海軍はDASHの反省を活かし、有人ヘリコプターによるLAMPSの開発に着手しました。

LAMPS Mk.I

1970年、暫定策としてLAMPS Mk.Iが選定されました。これは救難ヘリコプターHH-2Dシースプライトをベースに開発されたSH-2Dです。DASHが座標指示による魚雷投下しかできなかったのに対し、LAMPS Mk.Iは磁気探知機（MAD）やソノブイを搭載し、母艦のソナーが届かない遠距離でも対潜捜索・攻撃が可能となりました。

Mk.Iの主な特徴

• - 対潜センサー（MAD、ソノブイ15発）を搭載
• - 母艦のソナーを補完するパッシブ対潜戦センサーとして機能
• - 音響情報を母艦に転送し処理
• - Mk.44またはMk.46短魚雷による攻撃
• - 行動時間約1時間、進出距離約93km
• - 対艦ミサイル防御（ASMD）、艦対艦ミサイル（SSM）の測的も可能
• - レーダー、電波探知装置（ESM）、フレア・マーカーを搭載

当初、SH-2E LAMPS Mk.IIの開発が計画されましたが、コストに見合う性能向上が見込めなかったため、Mk.Iの性能向上に移行。1973年5月より改良型SH-2Fの運用が開始されました。その後、SH-60をベースとするMk.IIIが開発されましたが、既存艦での運用が難しく、Mk.Iの運用も継続されました。1987年からは、SH-2Fを全面改設計したSH-2Gスーパー・シースプライトが開発されました。

LAMPS Mk.III

SH-2E LAMPS Mk.IIの計画中止後、アメリカ海軍は新型機によるLAMPS Mk.IIIの開発を決定しました。1977年、陸軍のUH-60AブラックホークをベースにしたSH-60Bシーホークが採用されました。

Mk.IIIの主な特徴

• - 機体規模が拡大し、搭載装備も大幅に拡充
• - ソノブイ搭載数25本
• - AN/UYS-1音響信号処理装置を搭載し、限定的な独立行動能力を獲得
• - レーダー、電波探知装置を更新
• - 行動時間2時間、進出距離約190km
• - ブロックIではMk.50魚雷、ペンギン空対艦ミサイルの運用能力を追加
• - ブロックIIでは、FLIR、ISAR、ヘリ間データリンク、SLAM測的能力を追加

その後、SH-60F艦上機と共通化されたSH-60Rが開発され、2001年にはMH-60Rに改称されました。SH-60Rは、レーダー、FLIR、音響信号処理装置が更新されたほか、低周波の吊下式ソナーを搭載しています。これにより、LAMPSはより高度な多用途ヘリコプターシステムへと進化しました。

各モデルの進化と技術的進歩

LAMPSは、当初のDASHの反省から有人ヘリコプターによるシステムへと移行し、Mk.I、Mk.IIIと進化を遂げました。Mk.Iでは、ソノブイやMADなどの対潜センサーを搭載し、遠距離での対潜作戦能力を向上させました。Mk.IIIでは、機体と装備の拡充により、より高度な独立行動能力を獲得し、行動範囲も拡大しました。また、Mk.IIIのブロックI、IIでは、新型魚雷やミサイルの運用能力が追加され、さらに多機能化が進みました。

最終的に、SH-60R/MH-60Rへと発展し、最新のセンサー、データリンク、武器システムを搭載した多用途ヘリコプターシステムとして、現代の海洋戦において重要な役割を果たしています。

まとめ

LAMPSは、アメリカ海軍の対潜能力を飛躍的に向上させたシステムです。DASHの失敗を教訓に、有人ヘリコプターによる多目的システムとして開発され、技術革新とともに進化を続けています。現在では、SH-60R/MH-60Rとして、その多用途性と高性能を活かし、現代の海洋戦において不可欠な存在となっています。

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