LHS 3844 b

Kua'kua (クアクア)

太陽系外惑星Kua'kuaは、かつてLHS 3844 bとして知られていた天体です。太陽よりも小さく低温な赤色矮星LHS 3844（現在はBastũ̀と命名）の周囲を回る惑星で、NASAのトランジット系外惑星探索衛星TESSによって発見されました。

この惑星は地球の約1.32倍の半径を持ち、岩石質のいわゆるスーパーアースに分類されます。特筆すべきはその軌道で、主星LHS 3844から非常に近い距離を公転しており、わずか11時間という極めて短い周期で一周します。主星に近接しているため、Kua'kuaは潮汐固定されていると考えられています。これは、常に同じ面を主星に向けている状態で、片側が永遠の昼、反対側が永遠の夜となっています。

観測によれば、Kua'kuaの表面は月の岩石や水星に似て反射率が低い（アルベドが低い）可能性が示唆されています。また、昼側の温度は非常に高く、推定で約770℃（1040 K）に達するとされています。夜側への熱の伝達がほとんど見られないことから、この惑星には厚い大気が存在しない可能性が高いと結論付けられています。ただし、完全に大気が無いわけではなく、0.1バール程度の薄い雲が存在する可能性は否定されていません。

なぜKua'kuaに大気が見られないのかは、惑星科学において興味深いテーマです。いくつかの仮説が提唱されています。一つの可能性として、この惑星が主星の近傍、つまり「雪線」よりも内側で形成されたため、大気の材料となる揮発性物質が元々乏しかったという説があります。もし雪線より外側で形成されていれば、揮発性物質が豊富に供給され、その後の地質活動で大気が形成されたと考えられます。また、惑星のマントルの組成が地球とは異なり、ガスの放出（アウトガス）が少なかった可能性や、たとえ地球に似た組成であっても、主星である赤色矮星の活動的な振る舞いが大気を維持することを困難にしたという説も挙げられています。さらに、惑星形成の初期段階で、大気とマントルの一部を剥ぎ取るような巨大な天体衝突が発生したという説や、外側の軌道に巨大ガス惑星が存在し、内側への彗星などの揮発性物質供給を妨げているという説も考えられています。

この惑星LHS 3844 bとその親星LHS 3844は、国際天文学連合（IAU）が2022年に実施した「太陽系外惑星命名キャンペーン（NameExoWorlds 2022）」の対象候補となりました。これは「持続可能な開発のための国際基礎科学年2022」を記念した企画の一つです。世界中からの公募を経て、2023年6月に最終的な名称が発表されました。親星LHS 3844は「Bastũ̀（バスツー）」、惑星LHS 3844 bは「Kua'kua（クアクア）」と命名されました。これらの名称は、コスタリカの先住民であるブリブリ族の言語に由来しています。Bastũ̀はブリブリ語で「ハチドリ」を意味し、創造神の使者として神聖視される鳥です。Kua'kuaはブリブリ語で「蝶」を意味し、伝統的に女性を象徴する言葉であり、特定の種類の蝶の出現が雨季の到来を告げる兆しとされています。この命名は、世界の多様な文化と宇宙科学を結びつける象徴的な出来事となりました。

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