LIVE! BLACKMASS IN LONDON

聖飢魔IIの挑戦：ロンドン公演の記録『LIVE! BLACK MASS IN LONDON』

『LIVE! BLACK MASS IN LONDON』は、日本のヘヴィメタルバンド、聖飢魔IIの第九大教典にして初のライブアルバムです。1992年3月13日にソニー・ミュージックレコーズからリリースされ、前作ベストアルバム『愛と虐殺の日々』からわずか3ヶ月後の発表となりました。本作は、聖飢魔IIがセルフプロデュースを手掛けた作品であり、スペイン、イギリス、アメリカで行われた海外ミサツアーの内の、1991年11月21日ロンドンのマーキー・クラブ公演の模様を収録しています。

海外ミサツアーの背景：セビリア万国博覧会から世界へ

聖飢魔IIの海外進出は、1991年開催のセビリア万国博覧会のプレイベント「セビリア・フェスタ・ジャパンデー」への参加がきっかけでした。日本の文化発信を目的とした同イベントに、日本のバンド代表として聖飢魔IIが抜擢されたのです。NHKによるハイビジョン放送も絡み、レコード会社と聖飢魔IIの地道な交渉によって実現した貴重な機会でした。この成功を足掛かりに、ロンドン、そしてニューヨークでのミサ開催へと繋がっていったのです。

この海外ミサツアー実現の背景には、メンバーのソロ活動やサイドプロジェクトの活発化がありました。1990年の第七大教典『有害』発表後、ルーク篁III世のソロアルバム『篁』が予想を上回るヒットを記録。その後、ライデン湯沢とゼノン石川を中心に結成されたRXもアルバム『CHEMICAL REACTION』を発表し、バンドの活動にも大きな影響を与えました。これらの成功が、聖飢魔IIの海外進出という大胆な計画を後押しした側面も否定できません。

録音と構成：初期聖飢魔IIの復活と、海外での挑戦

海外ミサに向け、デーモン小暮はスペイン公演ではスペイン語、ロンドン公演では英語での歌唱とMCに挑みました。この挑戦には、幼少期をニューヨークで過ごした経験が自信を与えていたようです。一方、メンバーは、海外での演奏は、日本で培ってきた人気とは全く異なる、未知の状況下でのパフォーマンスとなることを認識していました。エース清水は「素っ裸で放り出されたような極限状況」と表現しており、慣れ親しんだ日本の観客との違いを痛感する場面もあったようです。

音楽面では、議論の末、初期の音楽性を再現した構成に決定しました。これは、レコード会社や事務所からの「聖飢魔IIを見つめ直せ」という無言の圧力だったと、篁は推測しています。初期の楽曲を軸に、英語詞、英語MCという挑戦的な試みによって、聖飢魔IIは新たな一面を見せつけました。海外での演奏を通して、メンバーは新たな音楽的可能性と、自分たちの音楽の普遍性を再確認したのです。

リリースと反響：オリコンチャート18位、そしてアメリカ進出の夢

『LIVE! BLACK MASS IN LONDON』は、CDとカセットテープの2形態でリリースされました。「1991年11月21日 ロンドン・マーキー・クラブを襲撃した悪魔の黒ミサ！」というキャッチコピーが、その熱気を伝えています。本作はオリコンアルバムチャートで最高18位を記録。2.4万枚のセールスを達成しました。

ニューヨーク公演では、現地の音楽プロデューサーからアメリカデビューの話が持ち上がりました。しかし、プロデューサーの担当バンドの商業的失敗により、この話は頓挫します。それでも、聖飢魔IIの音楽が海外で評価されたことは、大きな収穫だったと言えるでしょう。音楽情報サイト『CDジャーナル』も、小暮の英語MCと英語詞を高く評価しています。

まとめ：聖飢魔IIの挑戦と、その成果

『LIVE! BLACK MASS IN LONDON』は、聖飢魔IIの音楽性とパフォーマンスの高さを再確認できる作品です。海外での挑戦を通して得た経験は、バンドのさらなる成長に繋がる礎となりました。初期の楽曲を軸にしながら、英語での歌唱とMCという冒険的な試みは、彼らの音楽の普遍性と高いパフォーマンス能力を証明するものでした。このアルバムは、単なるライブアルバムではなく、聖飢魔IIの歴史における重要な転換点として記憶されています。また、後にリリースされたライブビデオ『実録! 欧州非常事態宣言』にも、本作と同様ロンドン公演の模様が収録されています。

もう一度検索