LTFS

Linear Tape File System (LTFS)とは

Linear Tape File System (LTFS) は、Linear Tape-Open (LTO) Ultrium 5以降でサポートされたテープフォーマット/ファイルシステムです。LTFSは、テープ上に2つのパーティションを作成し、ファイルとメタデータ（コンテンツ情報）を分けて記録することで、テープをディスク媒体やリムーバブルメディアのように扱うことを可能にします。これにより、従来のテープシステムに比べて、データの取り扱いが大幅に容易になります。

LTFSの概要

従来のテープシステムでは、データは名前のないデータブロックとして記録されていました。しかし、LTFSを利用すると、XML形式のメタデータにより、ディレクトリ構造を有しているようにユーザーやアプリケーション側から見えるようになります。これにより、ドラッグアンドドロップでのアクセスが可能となり、テープの利用がより直感的になります。

また、LTFSは自己記述的なテープフォーマットであるため、LTFSを利用したどのシステムからでも読み書きが可能です。異なるシステム間でのデータ交換が容易になり、可搬性に優れ、他のリムーバブルメディアよりも高容量であるというメリットがあります。さらに、上位アプリケーションとの連携が容易になり、外部システムにメタデータ管理のデータベースを持つ必要もありません。

LTFSの注意点

LTFSには多くの利点がありますが、テープのシーケンシャルな記録再生特性自体は変わらないため、注意が必要です。テープでは、直前に記録したデータブロックの終点から追記を始めるため、特定の領域のみを更新することは困難です。このため、LTFSではファイルを削除しても削除分の容量を再利用することはできません（該当領域が利用不可能とマークされるだけ）。同様に、上書きもデータブロックの更新ではなく、新たなファイル追記のように動作します。テープ全体の容量を再利用するためには、テープをリフォーマットする必要があります。

しかし、LTOのストリーミング時のデータ転送速度はHDDよりも高速であるというメリットもあります。

LTFSの歴史

LTFSは、2008年から2009年の間にIBMによって初めてプロトタイプが作成され、NAB show 2009でデモンストレーションされました。デモでのフィードバックをもとに、IBMは製品化に向けてオーバーホールを行い、LTFSの開発チームはLTOベンダー（HP及びクアンタム）と協業し、一般公開に向けてサポート体制を構築しました。

2010年4月12日には、IBM、HP、クアンタム及びLTO Consortiumによって、実装とスペックがリリースされました。現在、SNIAのLinear Tape File System Technical Work Groupがアーキテクチャの策定を担当しており、2016年6月にはISO標準として認定されました（ISO/IEC 20919:2016）。

LTFSの仕様

LTFSの仕様には、過去のバージョンに準拠しているメディアが正しく再生できることなどが含まれます。また、テープロードと同時にインデックス・パーティションを読み込んでホストサーバーのメモリ空間に展開することで、高速なインデックスサーチを可能にしています。ただし、ライブラリエディションを利用する場合や、数百kB程度の小さいファイルを大量に書き込む場合などでは、想定される最大ファイル数およびディレクトリ数に応じて、ホストサーバーのメモリ量を注意深く設計する必要があります。

各社実装

LTFSには、シングルドライブエディションとライブラリエディションの2種類があります。

シングルドライブエディション

シングルドライブエディションは、テープライブラリのロボット制御機能を含まないバージョンです。各社ウェブサイトから無料でダウンロードできます。テープライブラリを利用したい場合は、商用のライブラリエディションを利用するか、Linuxからテープライブラリを制御できるmtxコマンドなどでアプリケーションを独自に作成する必要があります。

主なシングルドライブエディション提供ベンダーは以下の通りです。

IBM:
旧名: IBM Linear Tape File System - Single Drive Edition
サポートOS: Red Hat Enterprise Linux (RHEL), SUSE Linux Enterprise Server (SLES), Mac OS X, Windows 7, Windows Server 2008 R2
HPE:
サポートOS: Apple OS X, Linux, Microsoft Windows (各種), Red Hat Enterprise Linux, SLES
Quantum:
サポートOS: Linux, Mac OS X, Windows
Oracle:
ミッドレンジ (LTO) ドライブおよびStorageTek T10000C/Dドライブをサポート

ライブラリエディション

ライブラリエディションは、テープドライブへのロード/アンロードなど、テープライブラリのロボット制御機能も含まれている商用ソフトウェアです。ライブラリ内のLTFSフォーマットされたテープカートリッジはそれぞれ分離したフォルダーに見え、ユーザーはライブラリの制御を意識せずにデータにアクセスできます。

主なライブラリエディション提供ベンダーは以下の通りです。

IBM:
旧名: IBM Linear Tape File System - Library Edition
サポートOS: Red Hat Enterprise Linux (RHEL), SUSE Linux Enterprise Server (SLES)
Oracle:
StorageTek SL8500, SL3000, SL150のテープライブラリシステムをサポート

サードパーティー

各社からLTFSを活用したアーカイブ用のアプライアンスやソフトウェアが提供されています。これらは、HDD/サーバー/ドライブを一筐体に収めたものや、大容量HDDを搭載したサーバーに階層型ストレージ管理の機能を追加したものなど、多岐にわたります。

主なサードパーティー製品は以下の通りです。

UNITEX: LTFS3000 日本語GUIユーティリティ
1 Beyond社: LTO NetDrive, ThunderTape 2, EzStor Library
Cache-A社: PRO-CACHE, POWER-CACHE
Crossroads社: StrongBOXシリーズ
朋栄: LTRシリーズ及びLTSシリーズ
TOLIS Group社: BRU Producer's Edition (PE)
SGL社: FlashNet product
Masstech Group社: The MassStore Platform
メモリーテック社: Starchive LTO, LTARC-1000
Open Source Storage社: OSVault
storageDNA社: DNAevolutionシリーズ
Imagine Products社: PreRollPost, LTシリーズ, MagStor, mTape
QStar社: QStar Archive Manager, QStar Archive Replicator
XenData社: XenData6 Workstation software, DX-240, SXLシリーズ, X2500シリーズ
YoYotta社: YoYottaID

外部リンク

Archive of LTFS Format Specification documents: LTFS Format Specificationの全バージョンをダウンロードできるサイト
LTO Ultrium: LTO技術プロバイダー企業のウェブサイト
IBM Spectrum Archive(LTFS): IBMの製品ウェブサイト
HP Linear Tape File System: HPの製品ウェブサイト
Quantum Linear Tape File System: Quantumの製品ウェブサイト
IBM Linear Tape File System - Single Drive Edition software: IBMのシングルドライブエディションのダウンロードサイト
FOR-A LTR-100HS Video Archive Recorder: LTFSフォーマットテープカートリッジを使用するデジタルビデオレコーダー
1 Beyond Wrangler LTO-5 Offload Stations: オフロードおよびバックアップシステム
UNITEX LTO: USB3.0インターフェース搭載LTO-7

もう一度検索