L/Cカー

近鉄L/Cカー（エルシーカー）とは

近鉄L/Cカーは、近畿日本[[鉄道]]が運行する一般車両のうち、ロングシートとクロスシートの両方に転換可能な「デュアルシート」を搭載した車両の愛称です。この車両は、通勤輸送における混雑緩和と、観光輸送における快適性の両立を目指して開発されました。

登場の背景

近鉄では、大阪線や名古屋線などの長距離路線で、以前からクロスシートを装備した車両が多く使用されていました。しかし、1970年代に登場した2600系などの車両は、通勤輸送を考慮して片側4扉の車体を採用したものの、固定式のクロスシートのため、ラッシュ時の乗客収容力や快適性に課題がありました。

1988年には、転換クロスシートを備えた5200系が導入され、大阪線や名古屋線の急行の快適性は向上しました。しかし、5200系は混雑の少ない名古屋線には適していたものの、大阪近郊の通勤輸送には課題が残りました。そこで、混雑する大阪近郊の輸送と、閑散時の観光輸送という相反する需要に対応するため、ロングシートとクロスシートを切り替えられるデュアルシートの開発が進められました。

1996年には、2610系を改造した試験車による試験運転が行われ、その結果を基に、新造車と改造車が本格的に導入されました。奈良線系統でも、閑散時の観光輸送需要に応えるため、新造車が導入されました。

L/Cカーの概要

L/Cカーは、主に快速急行や急行などの優等列車に使用されますが、普通列車や準急、区間準急など、種別を問わず幅広く運用されています。全車両が片側4扉であるため、編成両数が同じであれば、片側4扉のロングシート車と共通で運用されることも多いです。

大阪線と名古屋線に配置される編成には、長距離運用や団体貸切を考慮し、トイレ付きの車両が連結されています（大阪線所属の5820系は2両）。

改造車と新造車では、ベースとなる車両の設計が異なるため、車両定員や冷房装置、車端部ロングシートの配置などに若干の違いがあります。しかし、全ての車両で、ドア間のデュアルシートは両側に2人掛けシートが3組、計12席、車端部はロングシートという配置は共通です。また、乗降扉の両側には、手すりも兼ねた仕切り壁が設置されています。

新造車は全てバリアフリー対応で、大阪線所属の5820系には車椅子対応トイレも設置されています。改造車も、全ての編成で先頭車に車椅子スペースが設けられています。

L/Cカーは、1996年にグッドデザイン商品（輸送機器部門）に選定されました。鉄道車両のシートが選定されたのは、グッドデザイン賞創設以来初の事例です。

近鉄の車両では、つり革は丸型が一般的ですが、L/Cカー（8A系を除く）では、優先座席以外の場所にも三角形のつり革が設置されています。

L/Cカーの車両形式

狭義には、新造形式である5800系、5820系、8A系を指しますが、広義には以下の形式が含まれます。

試作改造車
2610系2621F（1996年導入開始、名古屋線所属）
量産改造車
2610系2626F・2627F（1997年導入開始、名古屋線所属）
2800系2811F・2813F・2815F（1997年導入開始、名古屋線所属）
新造車
5800系（1997年導入開始、奈良線、大阪線、名古屋線所属）
5820系（2000年導入開始、奈良線、大阪線所属）
8A系（2024年導入開始）

2023年4月1日時点では、改造車を含めて、4両編成7本（28両）、6両編成14本（84両）の計112両が在籍していました。

デュアルシートのルーツ

実は、デュアルシートのアイデアは近鉄独自のものではなく、1972年に国鉄が試作したクハ79929号車に搭載されたロング/クロスシート可変機構がルーツとなっています。しかし、当時の技術では実用化が難しく、導入は見送られました。それでも、4扉通勤車両でラッシュ時の収容力確保と閑散時・長距離利用者の快適性確保を両立するというアイデアは、国鉄時代から存在していました。

他社における同種の車両

現在では、他社でも同様の機構を採用した車両が運用されています。首都圏では、クロスシート運用時は座席指定制列車に使用されることが多いです。

国鉄
クハ79929号車（試作車）
JR東日本
209系、E331系（2WAYシート、L/Cカーとは機構が若干異なる）
205系3100番台（ロングシート固定）
E331系（廃車済）
209系3000番台（廃車済）
東武鉄道
50090型（TJライナー、川越特急）
70090型（THライナー）
西武[[鉄道]]
40000系（S-TRAIN、拝島ライナー）
京王電鉄
2代目5000系（京王ライナー、Mt.TAKAO号）
東急電鉄
6000系、6020系、5050系（Qシート、座席指定サービス名称）
しなの[[鉄道]]
SR1系100番台（しなのサンライズ号、しなのサンセット号、軽井沢リゾート号）
京浜急行電鉄
* 1000形1890番台（Le Ciel、鉄道車両の愛称）

その他

L/Cカーの座席は、天龍工業によって製造されています。

また、アニメ「神のみぞ知るセカイ」に登場するキャラクター、エルシィの愛称は、このL/Cカーに由来しています。

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