『Lhasa』(ラサ)は、日本のロックバンド、
La'cryma Christiがメジャーレーベルから発表した通算2枚目のオリジナル・
アルバムです。
1998年にリリースされ、彼らのキャリアにおける重要な作品の一つとして位置づけられています。
制作背景とコンセプト
本作は、収録曲が二つの明確なパートに分けられている点が大きな特徴です。前半5曲は「yours」と題され、先行
シングルとしてヒットした「未来航路」「With-you」、そして
アルバムタイトル曲「Lhasa」といった、キャッチーで親しみやすいポップな楽曲を中心に構成されています。一方、後半5曲は「ours」と名付けられ、前半とは対照的に、バンドのより実験的かつ探求的な側面を反映したマニアックな楽曲群が収められています。ボーカルのTAKAは、それぞれのパート内の楽曲の流れが、どちらも「出会いから別れへ」というストーリーラインを意識して配置されていることを語っています。
商業的にも成功を収め、リリース時にはオリコン週間ランキングで最高8位を記録しました。
アルバム制作にあたって、メンバーそれぞれの視点から興味深いエピソードが伝えられています。例えば、ボーカルのTAKAは最終的な曲順を決定する会議には参加しなかったと言われています。また、ベーシストのSHUSEは、特に楽曲「Zambara」を
アルバムの冒頭に配置したいという希望を持っていたことが明かされています。
アルバムのタイトルにもなった楽曲「Lhasa」は、このSHUSEの発案によって生まれたものです。
ディスクジャケット
アルバムのアートワークも本作の印象を決定づける要素の一つです。ディスクジャケットには、縄文時代の遺物である遮光器式土偶が大きくデザインされています。この土偶が、遥か古代に
宇宙服を着用して日本に飛来した
宇宙人の姿を模しているのではないかというユニークな説から着想を得て、ジャケットでは一般的な
素焼きの質感ではなく、まるで最先端のセラミックのような滑らかで未来的な素材感が表現されています。これは、古代文明と未来、そして宇宙という広がりを結びつける、時空を超えたモチーフとしての意味合いが込められたものです。
この特徴的な土偶デザインが採用されるに至るまでには、意外なきっかけがありました。ボーカルのTAKAが
アルバムのデザイン打ち合わせのためデザイナーの元を訪れた際、そこにいた一匹の
チワワの顔立ちが、なぜか土偶に似ていると感じたことから、インスピレーションを得てこのモチーフの採用が決まったという逸話が残されています。
収録曲解説
アルバムには以下の楽曲が収録されており、それぞれに制作に関するエピソードや特徴があります。
「未来航路 Album Mix」*: 5枚目の
シングル曲を
アルバム向けにミックスし直したバージョンです。ドラムには打ち込みが使用されています。
「月の瞼」: 歌詞の一部に地名が登場しますが、ライブ会場によって「YOKOHAMA」が「幕張」や「渋谷」など、公演地の名前に変更されることがあります。
「With-you Album Mix」*: 4枚目の
シングル曲を
アルバム用にミックスし直したバージョンです。
「SHY」: この楽曲は、ドラムの
LEVINが初めて作詞と曲名の決定を手がけた作品です。
「Lhasa」: 6枚目の
シングル「未来航路」のカップリング曲として発表された楽曲です。アンプラグドやライブバージョンを含め、3パターンほどの異なるバージョンが存在します。また、完成までに当初の歌詞から大幅な変更が加えられました。
「Green」: この楽曲の歌詞は、TAKAが実際に喫茶店で偶然耳にしたカップルの会話に基づいていると言われています。また、楽曲のタイトルにもなった「緑」は、ベーシストSHUSEのラッキーカラーであることから選ばれたものです。
「PSYCHO STALKER」: ボーカルのTAKAの歌声が一部割れて聞こえるのは、レコーディング時に飲酒した状態で歌唱したためとのことです。歌詞はTAKA自身の実際の体験が基になっています。
「鳥になる日」: ライブパフォーマンスにおいて、TAKAが背後にオーケストラを従えて歌唱したことのある楽曲です。
*
「Zambara」: この曲は、TAKAが自身のボーカルで最も高い声を出している楽曲として知られています。リハーサルでは裏声で合わせていた高音パートを、本番のレコーディングでは地声で収録できたというエピソードがあります。曲の最後に微かに聞こえる笑い声は、TAKA自身の声です。
これらの楽曲と
アルバム全体の構成、そしてユニークなアートワークが、『Lhasa』を
La'cryma Christiの多面的な音楽性を体現する作品として位置づけています。