Little DJ〜小さな恋の物語

『Little DJ 小さな恋の物語』は、2007年にポプラ社から刊行された鬼塚忠による同名の小説を原作とする日本映画です。監督は永田琴が務め、少年時代の淡い恋と命の輝きを描いた感動作として知られています。

原作と映画では基本的なプロットは共通していますが、舞台設定や登場人物の年齢などにいくつかの変更が加えられています。例えば、小説の舞台は横須賀ですが、映画では北海道の函館となっています。また、主人公である太郎とヒロインのたまきの年齢も、原作では小学生ですが、映画では中学生に設定されています。

物語のあらすじ（映画版）

物語は、現代の東京でFMラジオ局のディレクターとして働く海乃たまき（広末涼子）が、担当番組の打ち切りに心を痛めながらも、かつてラジオの楽しさを教えてくれた少年との思い出を回想するところから始まります。

時代は1977年に遡り、舞台は函館。活発で野球好きな中学1年生の高野太郎（神木隆之介）は、ラジオDJ・尾崎誠の番組「ミュージック・エクスプレス」の熱狂的なファンでした。しかし、度重なる鼻血と昏倒により、母・ひろ子（西田尚美）に連れられて叔母・かなえ（村川絵梨）が看護師として働く高崎記念病院を受診。診断の結果は深刻で、太郎はそのまま入院することとなります。

主治医である若先生（佐藤重幸）の治療を受ける日々、太郎は病院の昼食時に流れるクラシック音楽が曜日ごとに決まっていることに気づき、興味を抱きます。ある日、彼は放送用スピーカーから延びるコードを辿っていくと、レコードプレーヤーや膨大なレコード、オープンリールデッキやマイクなどが置かれた部屋にたどり着きました。そこは「大先生」と呼ばれ、院長を務める高崎雄二（原田芳雄）の部屋でした。太郎がDJの真似事をする様子を見た大先生は、これを治療の一環として捉え、太郎に昼の院内放送を任せることを提案します。

「サウンド・エクスプレス」と名付けられた太郎の番組は、院内で次第に好評を博し、太郎自身の体調も上向いたため、個室から4人部屋へと移ることになりました。その部屋には、中村捨次（松重豊）、結城道夫（光石研）、曽我タエ（森康子）といった大人たちがいました。太郎は彼らとの交流を通して、様々な人生に触れていきます。一方、厳格な父・正彦（石黒賢）の価値観に反発し、父がくれたレコードを投げ捨ててしまうなど、葛藤も抱えていました。そんな中、道夫から番組への初リクエストを受け、「サウンド・エクスプレス」は初めての生放送で、道夫のリクエスト曲であるクイーンの「愛にすべてを」を流します。

ある日、道夫がいたベッドに見慣れない少女の姿がありました。彼女は交通事故で全身に包帯を巻かれて運ばれてきた、子供部屋病棟に入院中の1つ年上の中学2年生、海乃たまき（福田麻由子）でした。たまきは、入院してからずっと「サウンド・エクスプレス」を聴いていたと太郎に告げます。その夜、眠れずにロビーに出た太郎は捨次と出会い、たまきへの淡い恋心を見抜いた捨次から、後悔しないように正直な気持ちを伝えるよう助言を受けます。

太郎はDJ活動にますます熱心に取り組み、「サウンド・エクスプレス」は院内で活気を帯びていきます。しかし、時を経て体調が回復したたまきは退院の日を迎えます。それに前後して、太郎の病状は再び悪化し、急性リンパ性白血病（ALL）が再発。彼は再び個室に戻され、「サウンド・エクスプレス」の放送も中断されます。太郎自身も、自分の病気の本当の名前を知っていることを打ち明けます。

太郎の病状が一進一退を繰り返す中、たまきが見舞いに訪れます。太郎はたまきを誘い、「今から映画を観に行こう」と病院を抜け出します。二人は函館市街で映画『ラストコンサート』を鑑賞し、函館山に登ります。広場でたまきに想いを伝えようと決意する太郎でしたが、突然の激しい雨に見舞われます。雨宿りで一夜を明かし、夜明けと共に雨は止みますが、太郎は再び鼻血を出して昏倒。病院へ運び戻されます。

長い間途絶えていた「サウンド・エクスプレス」宛てに、タエが初めて正直な胸の内を綴った手紙を送ります。大先生がピンチヒッターとしてそれを代読し、病床の太郎を励まします。

病床の太郎は、少し早い誕生日プレゼントとして両親からラジカセをもらいます。彼は病室からカセットテープに「サウンド・エクスプレス」を吹き込み、再び院内放送として流します。太郎のメッセージが流れるのと入れ違いに、たまきが彼を見舞いに訪れます。そして、太郎は今度こそ自分の気持ちをたまきに伝え、二人は互いの想いを分かち合うのです。たまきは「サウンド・エクスプレス」に、キャンディーズの「年下の男の子」をリクエストします。

それから15年の歳月が流れ、大人のたまき（広末涼子）は休暇を利用して函館の高野家を訪れます。太郎の仏前で手を合わせたたまきは、母・ひろ子に促され、当時のまま残されているという太郎の部屋に入ります。そこで見つけた「年下の男の子」のシングルレコードを手に取ると、裏に貼り付けられていた一枚のハガキが剥がれ落ちます。そのハガキの内容を読んだたまきは、涙が止まらなくなります。

後日、たまきはかつて太郎が夢中になったDJ尾崎誠（小林克也）を東京に招き、彼のかつての番組「ミュージック・エクスプレス」を復活させます。その復活放送で最初にかけられたリクエストは、15年前に太郎が送ることができなかった、たまきへのリクエストを託したハガキでした。そして、太郎とたまき、それぞれの想いが込められたキャンディーズの「年下の男の子」がラジオから流れるのでした。

キャスト

映画版の主なキャストは以下の通りです。（役名、設定等は映画準拠）

高野太郎（12歳、中学1年生）：神木隆之介
海乃たまき（13歳、中学2年生）：福田麻由子
高崎太郎（太郎の主治医、通称・若先生）：佐藤重幸（現・戸次重幸）
海乃たまき（29歳、ラジオ局のディレクター）：広末涼子
西村かなえ（28歳、太郎の叔母、看護師）：村川絵梨
中村捨次（太郎と同室の入院患者）：松重豊
結城道夫（太郎と同室の入院患者）：光石研
曽我タエ（太郎と同室の入院患者）：森康子
結城周平（結城の息子）：賀来賢人
高野ひろ子（38歳、太郎の母）：西田尚美
高野正彦（42歳、太郎の父）：石黒賢
高崎雄二（院長、通称・大先生）：原田芳雄
尾崎誠（ラジオDJ）：小林克也（特別出演）

スタッフ

監督：永田琴
脚本：三浦有為子、永田琴
原作：鬼塚忠「Little DJ 小さな恋の物語」（ポプラ社刊）
* 音楽：佐藤直紀

サウンドトラック

物語の舞台となった1977年頃のヒット曲が多数使用されており、特に太郎の院内放送や、登場人物たちの思い出の曲として効果的に流れます。主な使用楽曲には、シュガー・ベイブ「SHOW」、チューリップ「ブルー・スカイ」、クイーン「愛にすべてを」、フィンガー5「恋のダイヤル6700」、ヴィレッジ・シンガーズ「亜麻色の髪の乙女」、そして主題歌ともいえるキャンディーズ「年下の男の子」などがあります。

これらの楽曲（一部例外あり）は、佐藤直紀によるオリジナル音楽と共にサウンドトラックCDに収録されています。

ソフト化

本作はDVD化されており（発売・販売元：アミューズソフトエンタテインメント）、映像特典としてメイキングや舞台挨拶、予告編などが収録されています。

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