Lullaby (漫画)

漫画『Lullaby』の概要

『Lullaby』は、岩崎摂によって描かれた歴史漫画であり、主人公は有間王子（本作では「有間王子」と表記）。本作は1985年に『別冊月刊OUT』で初掲載され、以後多くの読者に親しまれています。この作品は、歴史的な事件をもとにした内容であり、パロディ要素も含まれています。

あらすじ

物語の舞台は656年、斉明天皇2年の日本。飛鳥岡本宮で発生した火災の中、有間王子は逃げ遅れますが、彼を救出したのは蘇我赤兄という男です。その様子を見ていた中大兄王子と中臣鎌子は、彼の存在を疎ましく思っていました。有間王子は、孝徳天皇の子でありながらも、重い発達障害を抱えており、次の大王（天皇）への道を開く中大兄王子にとっては、障害となる存在でした。

有間王子は自身を守るはずの舎人から過酷な体罰を受けた末、逃げ込んだ赤兄の家で保護され、治療を受けることになります。しかし、王子の行動は周囲を驚かせるもので、彼は四つん這いで食事を取り、時には反抗的な態度を見せます。それを見た赤兄は、王子に人間らしい振る舞いを促そうと試みますが、王子の反応は冷たいものでした。

一方、赤兄は王子の居場所について宮に使いを送り、王子の障害を隠そうとします。この時、王子は歌を歌っている姿を赤兄に見せ、彼に言葉を教えることを決意させます。しかし、言葉を学ぶことに抵抗を示す王子。この間、中臣鎌子は王子の身代わりを締め上げ、真相を掴もうと動き出します。

中大兄王子に対する謀反が進行中であり、赤兄はその渦中に巻き込まれることに。鎌子は赤兄を騙して彼の屋敷を襲撃し、有間王子と娘・常陸を誘拐します。王子は鎌子の部下との間で激しい戦闘を繰り広げ、傷を負った姿で連れ去られましたが、赤兄は最終的に王子を解放することに決め、彼を海に導きます。

史実との相違

漫画中の有間王子は、重度の発達障害を抱え、口がきけないだけでなく、攻撃的な態度を示す一面も描かれています。しかし、実際の史実においては、王子が障害を持っていたという記録はありません。また、歌を詠んだとされる和歌も残っており、異なる側面を物語っています。有間王子に同情する赤兄は、彼を絞首刑にせざるを得ない苦しい決断を下す一方、史実では忠実な部下として描かれています。

その他の要素

物語の中で、有間王子が歌う歌詞は『日本書紀』に記録された童歌とされており、特異な文化的背景を示唆しています。また、赤兄が王子を寺院に連れて行くシーンでは、視覚的な要素を通じて仏教の影響を示す意図が表れています。

『Lullaby』は、有間王子の成長物語と同時に、歴史的背景も交えた深いメッセージを伝える作品です。読者は主人公の内面に共感を抱き、彼の葛藤を通して人間の真実に迫ることができるでしょう。

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