M32 (天体)

M32はアンドロメダ座に位置する楕円銀河で、カタログ名ではNGC 221としても知られています。この銀河は、私たちの銀河系も含まれる宇宙の集団である「局所銀河群」に属しており、特に私たちの天の川銀河よりはるかに大きいことで知られるアンドロメダ銀河（M31）の伴銀河として重要な存在です。

地球からの距離は約290万光年と推定されています。その質量は、天の川銀河のおよそ10分の1程度と考えられており、比較的コンパクトな銀河と言えます。M32は主に古い恒星から構成される典型的な楕円銀河ですが、興味深いことに、通常楕円銀河に見られるような多数の球状星団はこれまでの観測では発見されていません。一方で、惑星状星雲の存在は確認されています。しかし、星間空間に存在するガスやダストは非常に乏しく、新たな星が活発に生まれる可能性は低いと考えられています。

ガスやダスト、そして球状星団が少ない理由として、M32が過去にその主銀河であるアンドロメダ銀河（M31）の非常に近くを通過した際に、M32の外層部、特にガスや塵、そして球状星団がM31の強い重力によって剥ぎ取られてしまったという説が有力視されています。このような銀河間の相互作用が、M32の現在の姿を形作ったと考えられます。

M32は比較的明るい銀河であるため、観測しやすい天体の一つです。写真撮影においても、一般的な装備、例えばISO800のフィルム感度、F2.8程度のレンズを使用し、約5分間のガイド撮影でも比較的容易にその姿を捉えることができます。特に、アンドロメダ銀河（M31）を写真に収めようとすると、M32はその構図の中に自然と含まれることが多いです。その見た目や、M31のすぐ近くに位置するという性質から、事前知識がない場合、写真を見てもM31の一部だと誤解したり、別の銀河だと気づかない人もいるほどです。

M32の発見は古く、1749年10月29日にフランスの天文学者ギヨーム・ル・ジャンティによって記録されました。ル・ジャンティは、口径の大きな「18フィート望遠鏡」を用いてアンドロメダ銀河（M31）を観測していた際に、M31の近くに直径約1分角の小さな星雲状天体を発見したと記しています。これが後のM32の発見とされています。

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