M36 (天体)

M36（NGC 1960）

M36は、ぎょしゃ座の天域に位置する美しい散開星団であり、メシエカタログの36番目に登録されています。また、新総カタログではNGC 1960として知られています。この星団は約60個の恒星が集まって構成されており、同じぎょしゃ座にある他の二つの著名な散開星団、M37やM38と比較すると小規模な集団です。

特徴

M36は、誕生から約2500万年しか経っていない、非常に若い星団と推定されています。このような若い星団は、比較的明るく青白い星々を多く含んでいることが多いのが特徴です。

観測の容易さもM36の魅力の一つです。双眼鏡でも、その存在を示すおぼろな光斑や、場合によっては10数個の明るい星々を識別することが可能です。さらに口径10cm程度の小型望遠鏡を用いれば、低倍率でも星団を構成する個々の星々をはっきりと分離して見ることができます。星団の中心部には、視覚的に確認できる二重星が存在しており、観測の際の良い目標となります。また、M36のすぐ南側には、別の見どころとして二重星OΣ737が位置しており、同時に観測することで星団周辺の様子をより楽しむことができます。

観測史

M36は、比較的明るく観測しやすい天体であるため、古くから多くの観測者によって注目されてきました。その最初の発見は、1654年以前にイタリアの天文学者ジョヴァンニ・バッティスタ・オディエルナによってなされたとされています。しかし、彼の発見は当時の天文学界で広く知られることはありませんでした。

次にM36を独立して発見したのは、フランスの天文学者ギヨーム・ル・ジャンティです。彼は1749年にこの星団を観測し、その記録を残しています。ル・ジャンティは自身の観測に基づき、「これは星雲と呼ぶべき性質のものではない。おうし座の北側の角の上方に位置しており、数個の星を識別するには12フィート（約3.6メートル）の長焦点望遠鏡が必要である」と記しました。この記述から、彼が星雲と星団を区別しようとしていたこと、そして当時の望遠鏡の性能から個々の星を分離して観測することに一定の困難があったことがうかがえます。

そして、フランスの著名な天文学者シャルル・メシエは、1764年9月2日にM36を観測し、自身の作成する星雲・星団リストであるメシエカタログにこれを登録しました。メシエは自身の観測記録の中で、「ぎょしゃ座にある星の集団である。ファイ星に近く、3.5フィート（約1メートル）の一般的な望遠鏡では個々の星を見るのは難しい。星雲状の要素は含まれていない」と述べています。ル・ジャンティと同様に、メシエもこれが星雲ではないことを確認し、星の集まりであることを認識していましたが、彼が使用した小口径の望遠鏡では、星団を構成する多数の星を個別に捉えるのは容易ではなかったようです。

このように、M36はその美しい姿と、発見からカタログ登録に至るまでの興味深い観測史を通じて、多くの天体愛好家にとって魅力的な観測対象となっています。ぎょしゃ座が空高く昇る冬の夜には、双眼鏡や望遠鏡を使ってこの若く輝く星の集まりを探してみる価値は大きいでしょう。

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