M36ジャクソン

M36 GMC (ジャクソン) 駆逐戦車

M36 GMC（M36 ガン・モーター・キャリッジ）は、第二次世界大戦中にアメリカ陸軍が使用した対戦車自走砲（駆逐戦車）です。ジャクソンという愛称で知られていますが、これは戦後に創作されたもので、アメリカ陸軍では正式には使用されていません。

概要

戦車駆逐大隊が運用する自走砲として、M7 3インチ砲搭載のM10 GMCやM1 76mm砲搭載のM18 GMCが活躍しましたが、パンターやティーガーといったドイツ軍の中戦車・重戦車を正面から撃破するには力不足でした。そのため、より強力な対戦車火砲を搭載した駆逐戦車の開発が求められ、M1 90mm高射砲を原型としたT7戦車砲が開発されました。

開発

T7（後のM3）は、T1E1重戦車やM10の試作型に搭載する実験が行われました。90mm砲の威力は十分でしたが、M10の砲塔は前方に向けて絞り込まれた形状のため、スペースが不足していました。そのため、より大型の砲塔が必要と判断されました。

1942年12月には、即用弾薬庫とカウンターウェイトを兼ねる鋳造製の後方張り出し部を持つ新型砲塔を、M10A1に搭載したT71と、M10に搭載したT71E1の2つの試作車が完成しました。前者が90mm砲搭載自走砲M36として採用されました。

M36は、M10系からの改造や新規生産によって、各型合計2,324両が生産されました。

武装

M36の主砲である90mm T7戦車砲は、ドイツ軍の8.8 cm FlaK 18/36/37|8.8 cm FlaK 18_36_37 高射砲やティーガーIの主砲に匹敵する威力を持っていました。後に、砲口にシングルバッフル型のマズルブレーキが追加されました。

戦後、フランス軍の装備車両のようにダブルバッフル型のマズルブレーキに変更されたり、陸上自衛隊の保有車両のように主砲にエバキュエーターが増設されたM3A1に変更され、車体前方機銃が追加されたものもあります。これは、朝鮮戦争に投入された車両にも見られるため、日本の赤羽にあったデポで改造された可能性が指摘されています。

バリエーション

M36: M10A1から改造された量産型（1944年10月～）。90mm砲は榴弾の威力も高く、歩兵の直接火力支援にも多用されました。しかし、M10同様に砲塔上部が開放されており、防御力が低かったため、現地改造で開放部前半をカバーする装甲を取り付けた例もあります。後に正式な改修キットが作られましたが、大戦中にはほとんど間に合いませんでした。
M36B1: M10A1からの改造だけでは需要を満たしきれないため、M4A3戦車の車体にM36の砲塔を搭載したもの。M4A3の車体を使用しているため車高は高くなりましたが、前方機銃はそのまま装備され、装甲は駆逐戦車用車体よりも厚くなっています。フィッシャー社で187両が生産されました。
M36B2: T71E1の量産型。試作車に付いていた対空機銃のリングマウントは廃止され、他の量産型と同様のシンプルな銃架に載せられています。1944年いっぱいで生産が終了していましたが、バルジの戦いでの苦戦などから90mm砲を持つ本車の需要が増大。アメリカン・ロコモーティブ社で672両が生産された他、モントリオール・ロコモーティブ社で52両のM10からの改造が行われました。大戦末期の登場であったため実戦には間に合わず、戦後多くが同盟国に供与されました。砲塔上部開放部分前半をカバーする装甲キットは、当初から標準的に導入されています。

第二次大戦後の実戦参加

M36系列は、大戦後も西側同盟国やユーゴスラビア連邦に供与され、様々な戦場で使用されました。

朝鮮戦争では日本を経由して投入され、その後韓国陸軍にも供与されました。朝鮮戦争に投入されたM36には、M4中戦車のように車体前方機銃が増設された車両も確認されており、陸上自衛隊土浦駐屯地に展示されている車両もこのタイプです。

フランス軍もM36B2を受領し、インドシナ戦争で使用しました。パキスタン軍にはM36B2が供与され、印パ戦争に投入されました。

ユーゴスラビア紛争では、連邦とクロアチア双方でM36B1とB2が、T-55やM-84に混じって実戦で使用されました。これらはエンジンをT-55用のディーゼルエンジンに換装していたと言われています。

イラン軍もM36B1およびM36B2を配備しており、イラン・イラク戦争で使用しました。これらの一部はイラク軍によって鹵獲され、イラク戦争ではイラク軍が装備していたM36B1やM36B2がM47パットンと共に発見されました。

日本での運用

試験評価用としてM36B2が1両のみ陸上自衛隊に供与されています。本車の90mm砲は、STA（61式戦車）の開発に大きく貢献し、STAの防盾部は本車に類似しています。現在はその車両は陸上自衛隊土浦駐屯地に展示されています。

登場作品

ゲーム
R.U.S.E.: アメリカの駆逐戦車として登場。
War Thunder: アメリカ駆逐戦車M36 GMCとして開発可能。イタリアツリーにはM36B1が登場。2022年6月のアップデートで日本ツリーには陸上自衛隊が評価試験用で購入したM36B2が追加され、War ThunderのM36全型を通して車体前方機銃を装備したのは日本ツリーの本車とM36B1のみ。
World of Tanks: アメリカ駆逐戦車M36 Jacksonとして開発可能。
トータル・タンク・シミュレーター: アメリカの海賊戦車M36として登場。

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