M46パットン

M46パットン：アメリカ戦車開発史における重要な一歩

M46パットンは、第二次世界大戦後のアメリカで開発された戦車です。その名は、ヨーロッパ戦線で活躍したジョージ・パットン陸軍大将に由来します。M46は、実質的にはM26パーシング戦車の改良型として位置づけられますが、M1エイブラムスが開発されるまでの間、アメリカ軍の主力戦車であったパットンシリーズの基礎を築いたという点で、非常に重要な存在です。

開発の背景

第二次世界大戦終結後、アメリカにおける戦車の生産・開発は一時的に停滞しました。当時のアメリカ軍は、M24チャーフィー軽戦車、M4A3E8シャーマン中戦車、そしてM26パーシング重戦車によって、十分な機甲戦力を維持できると考えていたからです。しかし、1940年代末に国際情勢が悪化すると、アメリカ陸軍はM26パーシングを更新する新型戦車の開発を決定します。

M26は、エンジンの出力不足が指摘されていました。そこで、より高出力のコンチネンタルAV-1790-3エンジンと、新型のアリソンCD-850-1トランスミッションを搭載した試作車M26E2が開発され、試験が行われました。また、搭載する90mm砲を長砲身のT54に変更する案も検討されましたが、最終的には従来の90mm砲に新設計の排煙器とマズルブレーキを装備したM3A1が採用され、試作車には新たにT40という名称が与えられました。良好な試験結果を受け、1948年12月には量産が決定し、翌1949年には「M46」という形式番号とパットン将軍の名が与えられ、制式採用されました。

M46の特徴

M46は、新規に生産されたものではなく、M26を改造して生産されました。アメリカ軍は当初、車体・砲塔ともに新規設計のT42をM26の後継とする予定でしたが、T42の開発が遅れたため、M46の車体にT42の砲塔を搭載したM47が暫定的な新型戦車として開発されました。

しかし、M47も初期トラブルが多発し、生産が遅延しました。このギャップを埋めるため、エンジンをAV-1790-5Bに、トランスミッションをCD-850-4に変更し、ブレーキや電装系統、消火装置などを改良したM46A1が1951年4月に制式採用され、追加生産されることになりました。最終的に、約2,000両生産されたM26のうち、800両がM46に、360両がM46A1に改造されています。

M26とM46は外見が非常によく似ていますが、エンジングリルが大きく異なり、起動輪と最後部の下部転輪の間に追加された小型転輪によって容易に識別できます。M46とM46A1は外見が同じであり、登録ナンバー30163849以降であればA1と識別可能です。

戦歴と評価

M46は、1950年8月より朝鮮戦争に投入され、朝鮮人民軍のT-34-85よりも優れた性能を発揮しました。M46は朝鮮戦争で計12回の対戦車戦闘を経験し、8両を失っています。後期には戦車戦の機会が減少し、砲撃支援やトーチカ代わりとして運用されました。車体や砲塔に虎縞模様や虎の顔を描いたM46の写真は、朝鮮戦争におけるアメリカ軍戦車の象徴として知られています。

アメリカ軍のM46は、1957年2月に後継のM47およびM48にその座を譲り、全車退役しました。予備車両として保管されたものは、M47の部品取りや、実弾射撃の標的として利用されました。

M46はアメリカの同盟国にも供与されましたが、その数は少なく、主にM47導入のための訓練用として用いられました。また、朝鮮戦争時に中国軍に鹵獲された車両はソビエト連邦に提供され、詳細な調査を受けました。ソ連による評価は、車高が高い、装甲防御に劣る、燃費が悪い、乗員の作業スペースが不足しているなど、自軍の同クラスの重戦車よりも劣るとされました。しかし、この際に解析された主砲排煙器は、ソビエトの開発した戦車（T-55戦車など）に採用されています。

各型と派生型

T40: M26E2の改良試作型で、M46の原型となりました。
M46: 本格的な量産型です。
M46A1: エンジン、トランスミッション、ブレーキなどを改良した改修型です。
M46E1: M46の車体にT42砲塔を搭載したもので、後のM47となります。
* T39: T40から改造された試作工兵戦車型です。

M46パットンは、アメリカ戦車開発史において、過渡期を象徴する存在でありながらも、その後のパットンシリーズの発展に大きく貢献した、重要な戦車と言えるでしょう。

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