M5トラクター

M5トラクター（M5 High-Speed Tractor）

M5トラクターは、アメリカ合衆国で開発された砲兵用の高速牽引車であり、その制式名称はM5 High-Speed Tractorです。日本の陸上自衛隊では「13tけん引車 M5」として運用されました。このトラクターは、特に第1次世界大戦以降の戦訓を所有する軍において、陸上戦力の機動力を高めるために開発されました。

開発の背景

アメリカ軍は戦間期、陸上戦力の機動力向上が不可欠であると認識し、特に砲兵の移動手段を改善する必要があると考えました。そのため、馬による牽引から、より効率的な砲牽引車を使用する方向へとシフトしました。この背景には、第二次世界大戦の勃発があり、軍備の拡充が急務となりました。大口径の砲を牽引するため、M5は150mm級の重砲を牽引可能な13トン級の車両として設計されました。

当初はT13という名称で、M3軽戦車の技術を基に開発されていましたが、最終的に1942年10月に「M5 HSP」として制式化されたのです。M5は1943年から1945年にかけてインターナショナル・ハーベスター社により生産されました。

M5の特徴

M5は主にM101 105mm榴弾砲やM59 155mmカノン砲を牽引し、同時に操作人員や弾薬を運搬できる設計になっています。半開放式のキャビンを持ち、開放部には必要に応じて幌が取り付けられます。キャビンにはM49機銃架が備えられ、自衛用の火器として12.7mm重機関銃M2が装備されています。最大牽引力は8.23トンで、牽引具を搭載し、ウィンチも装備されています。

日本での運用

日本の陸上自衛隊では155mmりゅう弾砲M1や155mm加農砲M2を牽引する役割を担い、「13tけん引車 M5」として特科部隊に配備されました。アメリカ軍から供与された当初は状態が悪いものが多く、メンテナンスが必要でしたが、その設計は自衛隊の国産車両開発にも影響を与えました。

1953年からはM4 HSTと共に供与され、以後も継続して配備が進められましたが、1970年代には後継車両の73式けん引車に置き換えられました。

各型と性能

M5トラクターはいくつかのバリエーションを有し、基本型とM5A1改良型に大きく分けられます。M5は基本型であり、最初の量産車両です。M5A1はより改良された型で、キャビンデザインは全鋼製になり、979両が生産されました。さらにM5A2やM5A3は、懸架装置が変更された型です。

M5に関する基本的な諸元は以下の通りです：

• - 全長: 4,850mm
• - 全幅: 2,540mm
• - 全高: 2,640mm
• - 乗員: 11名
• - 総重量: 12,950kg
• - 最高速度: 48.5km/h
• - 牽引能力: 9t
• - エンジン: コンチネンタル社製 R6572 空冷V型6気筒ガソリンエンジン

映画やメディアへの登場

M5トラクターは、特撮映画「ゴジラ」など、さまざまなメディアにも登場し、その存在感を示しています。アメリカではコレクターによって個人所有されている車両もあり、一部はレプリカとして改造され、映画に使用されることもあります。

このように、M5トラクターはその歴史的背景と仕様から、戦争における重要な役割を担った車両であり、今もなお多くの人に記憶されています。

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