M101 105mm榴弾砲

M101 105mm榴弾砲

M101 105mm榴弾砲（M101 105mm Howitzer）は、アメリカ陸軍が第二次世界大戦からベトナム戦争にかけて使用した榴弾砲です。当初はM2A1 105mm榴弾砲として開発され、後にM101として制式化されました。その高い汎用性と信頼性から、アメリカ軍だけでなく、多くの国々で採用され、長きにわたり運用されました。

開発経緯

第一次世界大戦後、アメリカ陸軍はフランス製のM1897 75mm野砲の後継として、鹵獲したドイツ軍の105mm榴弾砲を参考に新型榴弾砲の開発を開始しました。1920年代にはいくつかの試作モデルが作られ、その中で最も優秀と評価されたものが1927年にM1 105mm榴弾砲として制式化されました。しかし、予算の問題でM1987野砲の更新計画は一時中止となりました。

その後、1932年にはM1榴弾砲の改良型であるM2 105mm榴弾砲（M1砲架型）が開発されました。これは分離装薬を半固定装薬に変更し、尾栓を改良したモデルでした。さらに、馬による牽引を前提としていたM1砲架を自動車による牽引に対応させるため、タイヤ部分を改良したM2砲架が1940年に制式化されました。そして、M2榴弾砲本体の砲尾環を改良したM2A1 105mm榴弾砲が同年3月に制式化され、このM2A1榴弾砲をM2砲架に搭載したものが、第二次世界大戦に向けて大量生産されることになりました。M2砲架はその後、ブレーキを簡略化したM2A1砲架、防弾板を変更したM2A2砲架へと改良されました。

第二次世界大戦での活躍

M2A1榴弾砲は1941年にアメリカ軍に採用され、陸軍と海兵隊の師団砲兵に配備され、第二次世界大戦で広く使用されました。その高い火力と機動性は、戦局に大きな影響を与えました。また、戦後には、連合国や西側諸国に多数が売却、または供与され、世界各地で運用されることとなりました。

その後の運用

1962年にアメリカ陸軍の型式指定方法が変更され、M2A1砲架型のM2A1榴弾砲はM101 105mm榴弾砲、M2A2砲架型のM2A1榴弾砲はM101A1 105mm榴弾砲として制式指定が変更されました。

M101榴弾砲はベトナム戦争でも使用されましたが、1966年からはより軽量で安価な新型M102 105mm榴弾砲への更新が開始されました。しかし、M101榴弾砲の扱いに熟練した部隊は更新をなかなか受け入れず、ベトナム戦争終結まで更新は完了しませんでした。

陸上自衛隊での運用

陸上自衛隊では、アメリカ軍供与品のM2A1 105mm榴弾砲が155mm榴弾砲M1と共に野戦特科部隊に配備されました。この際、日本人の体格に合わせて改修され、58式105mm榴弾砲として国内生産も行われました。その後、第1空挺団の空挺特科大隊では120mm迫撃砲 RTに、その他の野戦特科部隊では75式自走155mm榴弾砲やFH70に更新され、退役しました。しかし、現在でも関東補給処において、礼砲および演奏用として少数が保有されています。

各国での運用

M101榴弾砲は、多くの国で採用され、運用されました。現在でもマダガスカル陸軍がM101を保有しているほか、カナダ陸軍ではC1榴弾砲として採用し、砲身を延長して射程を延伸させた改良型のC3榴弾砲も使用されています。また、ユーゴスラビアで使用されていたM101の一部はクロアチアが保有し、国産化したM56も運用しているとされています。さらに、韓国などではM101の改良型が製造されています。

派生型

M101榴弾砲には、様々な派生型が存在します。

自走砲型

M2A1榴弾砲をM3ハーフトラックの車体上に搭載したT19 HMC 105mm自走榴弾砲が1941年末に開発され、1942年初頭から生産されました。その後、M2A1榴弾砲をM3中戦車の車体上に搭載したM7 105mm自走榴弾砲が開発され、さらにM4A3中戦車の車体に搭載したM7B1 105mm自走榴弾砲も生産されました。これらの自走砲は、北アフリカ戦線、イタリア戦線、西部戦線などで使用され、M7自走砲は戦後も朝鮮戦争や中東戦争などで実戦投入されました。

M3 105mm榴弾砲

M2A1榴弾砲の砲身を短縮し、M1 75mm榴弾砲の駐退復座機とM3砲架に搭載したM3 105mm榴弾砲も開発されました。これは、M2A1と同等の性能を持つ軽量版として、空挺部隊や歩兵部隊に配備されました。

M4 105mm榴弾砲 (戦車砲型)

M2A1 105mm榴弾砲をベースに開発された戦車砲であり、M4中戦車に搭載するため1942年初頭に計画されました。当初はM4中戦車のバリエーションであるM4A4の砲塔に搭載されましたが、鎖栓器が過大で砲弾の装填が難しく、重量バランスの問題から改良が加えられました。改良後のM2A1はT8と呼ばれ、1943年8月頃に試験が行われ、M4 105mm榴弾砲として制式化されました。その後、M4中戦車に搭載され、4,680両が生産されました。M4榴弾砲を搭載したM4中戦車には、M4(105)、M4(105)HVSS、M4A3(105)、M4A3(105)HVSSなどの派生型が存在します。

使用弾は、M1榴弾、曳光成形炸薬榴弾M67、白燐発煙弾M84、発煙弾M84などがあり、M1榴弾の砲口初速は472.4m/s、最大射程は11.2kmでした。対戦車用のM67の場合、砲口初速は381m/sとなり、約102mmの垂直装甲板を貫通できました。また、M4榴弾砲をM26パーシングに搭載したM45突撃戦車も生産され、朝鮮戦争で使用されました。

登場作品

M101榴弾砲は、多くの映画や漫画、ゲームにも登場しています。

映画
『地球防衛軍』：防衛隊によるミステリアンドーム攻撃で使用
『父親たちの星条旗』：アメリカ海兵隊が使用
『ワンス・アンド・フォーエバー』：アメリカ軍の支援砲撃シーンに登場
漫画
『バトルオーバー北海道』：自衛隊がソ連軍への水際防御や礼砲として使用
『レイド・オン・トーキョー』：自衛隊がソ連軍に対して使用
ゲーム
『WarRock』：特定のマップにオブジェクトとして登場し、偵察兵が砲撃を要請可能
『マーセナリーズ2 ワールド イン フレームス』：「エルチェ」という名称で登場し、ベネズエラ軍とP.L.A.Vが使用

まとめ

M101 105mm榴弾砲は、その高い汎用性と信頼性から、第二次世界大戦からベトナム戦争に至るまで、長きにわたって使用された傑作榴弾砲です。その派生型も多く、自走砲や戦車砲としても活躍しました。現在でも、一部の国で運用されているほか、多くの映画やゲームにも登場するなど、その影響力は計り知れません。

参考文献

『笑える世界の軍隊 (DIA COLLECTION)』ダイアプレス、2009年11月。ISBN 978-4-86214-365-5。
荒木雅也他『陸上自衛隊の車両と装備』PANZER1月号臨時増刊/525号、アルゴノート社、2012年12月27日。

関連項目

M7自走砲
第二次世界大戦時の師団砲兵向け軽榴弾砲
オードナンス QF 25ポンド砲
10.5cm leFH 18
M-30 122mm榴弾砲
九一式十糎榴弾砲

外部リンク

pakdef.info（英語）
The Royal Regiment of Canadian Artillery - 105mm Howitzer C1 / 105mm Howitzer C2 / 105mm Howitzer C3（英語 / フランス語）
Canadiansoldiers.com - C1 105mm Howitzer / C3 105mm Howitzer（英語）
リトアニア国防軍公式サイト（リトアニア語）

画像リンク

M101榴弾砲の解説 - YouTube
C3榴弾砲の解説。カナダ軍ニュース - YouTube
* タイ王国陸軍のM101榴弾砲 - YouTube

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