M54 (天体)

M54（NGC 6715）

M54は、いて座に位置する球状星団の一つです。別名をNGC 6715とも呼ばれています。

概要

いて座の比較的見つけやすい場所にあり、南斗六星の一部であるいて座ζ星から南に約0.5度、西に約1.5度の位置にほど近い場所にあります。この星団の観測は、用いる望遠鏡の口径によって見え方が大きく異なります。

双眼鏡では、まるで一つの恒星のように点状にしか見えません。口径が20cm程度の望遠鏡を使うと、星団の周辺部に個々の星らしき光点が見えてくるという報告もあります。しかし、口径が40cmクラスの大型望遠鏡をもってしても、中心部の星を一つ一つ分離して見分けることは非常に困難です。視界はざらざらとした砂のような印象を受け、ほとんどの星が分離できない状況が続きます。明るい中心部は、東西方向にやや伸びた楕円形に見えるのが特徴です。

M54までの距離については、過去の研究では50,000光年から65,000光年程度の範囲にあると見積もられていました。しかし、21世紀に入ってからの精密な測定により、現在では地球から約87,400光年離れているとする値が定説となっています。

M54の所属についても、天文学的な発見がありました。1994年の研究で、M54が単に天の川銀河内の球状星団なのではなく、私たちの銀河の伴銀河である「いて座矮小楕円銀河 (SagDEG)」に属する星団であることが明らかになりました。これは、星団が銀河自身ではなく、別の小さな銀河の一部であるという興味深い事実を示しています。

観測史

M54は、フランスの天文学者シャルル・メシエによって1778年7月24日に発見されました。メシエは自身の観測記録に「非常に明るい星団で、中心が明るく星が見られない。口径3.5フィートの色消し望遠鏡でもよく見える」と書き記しています。彼はこの星団を個々の星に分離して見ることはできませんでした。

有名な天文学者ウィリアム・ハーシェルもM54を観測しましたが、彼もまた星団の周辺部のいくつかの星を辛うじて分離できただけで、この天体が球状星団であるとは明確に認識できなかったようです。

それに対して、息子のジョン・ハーシェルは、M54が球状星団であると認識しました。彼はこの天体について「球状星団。非常に明るく、丸い形をしており、中心部は周囲から急激に明るさを増している。星によく分解でき、主に15等級の星々から構成されている。外周から2.5分角離れた場所には14等級の星がある」と詳しく記述しています。彼の観測では、より多くの個々の星が分離できていたことがうかがえます。

関連項目

• - メシエカタログ
• - 球状星団
• - いて座矮小楕円銀河

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