M83 (天体)

M83は、うみへび座に位置する美しい棒渦巻銀河で、ニュージェネラルカタログ番号ではNGC 5236としても知られています。その華やかな姿から、「南の回転花火銀河」という親しみやすい別名でも広く呼ばれています。

この銀河を観測する際、使用する機材によってその見え方は大きく異なります。双眼鏡で捉えると、視野の中にぼんやりとかすかな広がりを持つ、淡い円形の星雲のように感じられます。その正体が渦巻銀河であることは、より高倍率の観測で明らかになります。

望遠鏡を用いると、口径の増加に伴って構造の詳細が徐々に明らかになっていきます。例えば、比較的口径の小さな6センチメートル級の望遠鏡でも、好条件の下であれば、中心部から伸びる渦巻きの兆候を捉えられるとされています。口径が8センチメートル程度になると、銀河の楕円形の輪郭の外縁部が次第に薄れていく様子が見て取れます。さらに口径10センチメートルクラスになると、M83が中心に棒状構造を持つ棒渦巻銀河であるという特徴が明確になります。口径20センチメートルクラスの望遠鏡では、渦巻き腕の具体的な構造や、その中に含まれる星雲状の領域などが分かり始め、大口径の50センチメートル級ともなれば、銀河を特徴づける三本の渦巻き腕がはっきりと識別できるほど、その詳細な姿を観察することが可能となります。

M83はまた、超新星の出現頻度が高いことでも天文学者の注目を集めています。これまでに、この銀河では合計六つもの超新星が観測記録に残されています。具体的には、1923年（この時は14等級の超新星でした）、1945年、1950年、1957年、1968年、そして1983年に超新星が発見されています。これは、他の多くの銀河と比較しても非常に多い数です。既知の銀河の中で、M83よりも多くの超新星（九つ）が確認されているのは、ケフェウス座にあるNGC 6946（花火銀河とも呼ばれますが、M83とは別の銀河です）のみであり、M83がいかに活発な星形成と星の進化の場であるかを示唆しています。

M83の観測史は古く、1752年にフランスの天文学者ニコラ＝ルイ・ド・ラカーユによって、南アフリカの喜望峰に近いケープタウンで初めて記録されました。その後、多くの天文学者によってその姿が描かれ、研究が進められました。

1781年には、有名な彗星ハンターであったシャルル・メシエがこの天体を観測し、自身のメシエカタログにM83として登録しました。メシエはM83について、「ケンタウルス座の頭部に近い位置にある、星を含まない星雲」と記述し、「非常に微かで、わずかな光でも見失ってしまうほど観測が難しい天体である。最大の集光力を持つ望遠鏡でなければ捉えるのは困難であろう」と述べており、当時の観測機器におけるその見えにくさを伝えています。また、メシエはM83が近くにある6等星や7等星と共に三角形を形成している位置関係についても触れています。

イギリスの天文学者ジョン・ハーシェルもM83を詳細に観測し、その記録を残しています。彼はこの銀河を「非常に大きく、また明るい」と評価し、「方位角55.1度の方向に広がっている」ことや、「中心部が急激に明るくなり、そこにはっきりと区別できる核が存在する」ことを記しています。

観測史において特に重要な記録の一つとして、イギリスのウィリアム・ラッセルによる観測が挙げられます。彼は地中海のマルタ島でM83を観測し、その渦状部分を肉眼で詳細に観察しました。そして、銀河を構成する三本の渦巻き腕を見事に識別し、スケッチとして記録に残しました。これは、写真技術が天体観測に導入される以前に、人間の眼によって銀河の渦巻き腕が明確に捉えられ、記録された最初の例であるとされており、当時の天体観測技術の限界を押し広げる偉業として評価されています。

このようにM83は、その美しい形態、頻繁な超新星の出現、そして観測史における重要な記録によって、天文学の研究対象として、またアマチュア観測者の目標として、今なお多くの関心を集めている魅力的な天体です。

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