MASH (信号変換)

MASH（Multi-stAge Noise SHaping）は、1980年代後半に松下電器産業（現パナソニックホールディングス）とNTTが共同で開発した、ΔΣ変調を用いたデジタル-アナログ変換回路（D/Aコンバータ）またはアナログ-デジタル変換回路（A/Dコンバータ）の一方式です。

一般的には、CDプレーヤーに搭載される「1bitD/Aコンバータ」として広く認知されています。この技術は、低次のΔΣ変調器を多段に接続することで、等価的に高次の安定した伝達関数を得ることを可能にします。

従来のシングルループ（1段）のΔΣ変調器と比較して、MASH方式には特有の利点と課題が存在します。特にA/Dコンバータとして電子回路に適用する場合、設計段階でのアナログループフィルタの伝達関数と、実際の回路素子の特性におけるばらつきが問題となります。これらの要因が、各段のデジタルフィルタの伝達関数との間でミスマッチを引き起こし、結果としてSN比の悪化を招く可能性があります。

MASH技術は、音響機器の分野において重要な役割を果たしており、特にデジタルオーディオの品質向上に大きく貢献してきました。その多段構成による高次特性の実現は、より精密でクリアな信号変換を可能にし、高品質な音楽体験を提供する上で不可欠な要素となっています。

関連技術としては、以下のようなものがあります。

ΔΣ変調：デジタル信号処理において、アナログ信号をデジタル信号に変換する際に用いられる変調方式です。MASHは、このΔΣ変調を多段化した技術です。
1bitD/Aコンバータ：デジタルオーディオ信号をアナログ信号に変換する際に、1bitの分解能で信号を処理する方式です。MASHはこの1bitD/Aコンバータを実現するための技術の一つです。

関連企業・ブランド
パナソニック：MASH技術を共同開発した企業であり、オーディオ機器分野で多くの製品を提供しています。
テクニクス：パナソニックのオーディオブランドであり、MASH技術を搭載した高品質なオーディオ製品を開発しています。
HALFコンポ：テクニクスがかつて展開していたオーディオ製品のシリーズ
RESTY：テクニクスがかつて展開していたオーディオ製品のシリーズ

MASH技術は、その開発以来、デジタルオーディオ技術の進歩に大きく貢献し、今日においてもなお、その技術は様々なオーディオ機器に応用され続けています。

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