MBSat

MBSat (Mobile Broadcasting Satellite)

MBSatは、韓国名「한별（Han Byul）」としても知られる移動体向け放送衛星です。2004年3月、米フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から、Atlas IIIAロケットによって打ち上げられたこの衛星は、日韓共同利用目的で設計されました。MBSatは、東経144度、高度約36,000kmの静止衛星として位置し、主にモバイル放送サービスを行っていました。

この衛星は、モバイル放送が65.34％、韓国のSKテレコムが34.66％の持分を保有しており、デジタルテレビ衛星DMBやデジタルラジオDABといった放送サービスを提供していました。日本市場ではモバイル放送株式会社（MBCO）によって「モバHO!」と名付けられたサービスが展開され、韓国ではSKテレコム傘下のTU Mediaが衛星DMBとしての提供を行っていました。

MBSatの特徴的な点は、携帯端末向けの放送が主な目的であるため、受信アンテナの大型化の制約を受けていたことです。このため、1215Wという高出力の電力増幅器が使用され、安定した信号送信が可能となっています。送信には、Sバンドの25GHz帯（2630 - 2655MHz）を利用しており、衛星の電波が届かない地域への対策として、ギャプフィラーと呼ばれる再送信設備がKuバンドの14GHz帯（13.824 - 13.883GHz）を使用して同時送信を行っていました。

特筆すべきは、日韓で同じ周波数を利用していたために、混信を避けるための工夫が必要とされました。具体的には、日本では左旋円偏波を採用し、韓国では右旋円偏波を使用していました。しかし、日本向けのサービスは2009年3月末に終了し、その後韓国でも2012年8月末にサービスが終了しました。

売却と改名

2013年には、MBSatは中国香港のAsia Broadcast Satellite（現ABS）に売却され、「ABS 2i」と改名されました。この際に衛星は東経144度から東経75度の位置に移動し、その後、ABS-4/Mobisat-1と名称を変更し、最終的に東経61度に移動しています。元々は日本や韓国向けに設計されたビームは、経度の変更によって北アフリカや中東のペルシア湾、紅海周辺地域に向けたものとなりました。

この衛星は、モバイル放送の枠を超えて、国際的な衛星通信の発展に貢献する一例となりました。放送サービスのスパンは短かったものの、日韓の共同プロジェクトによる成果と技術革新は、今後の衛星通信の発展において重要な役割を果たすでしょう。

出典

• - ABS' satellite ABS-4/Mobisat-1 61°E

詳しい情報については、外部リンクや関連資料を参照してください。

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