MCS

XM1202 Mounted Combat System (MCS)

XM1202 Mounted Combat System (MCS) は、かつてアメリカ陸軍が開発していたMGV（Manned Ground Vehicles）計画における、戦車型の軽量戦闘車両の仮称です。砲搭載戦闘システムとも呼ばれます。

開発経緯

アメリカ陸軍は長年、M1エイブラムス戦車を主力として運用してきました。しかし、2000年代以降の対テロ戦争や紛争介入において、M1エイブラムスのような重厚長大な戦車は、迅速な展開能力や非対称戦への対応に課題を抱えるようになりました。

そこで、DARPAを中心に、これらの要求に対応するためフューチャー・コンバット・システム (FCS) という新しい兵器体系の構築を目指しました。FCSでは、共通のMGV（有人車両）を基本設計として、戦車、自走砲、歩兵戦闘車など8種類の戦闘車両を開発する計画があり、MCSはその戦車型として開発が進められました。

しかし、MGV計画は2009年に中止され、新たにGCV（Ground Combat Vehicle）計画が開始されましたが、こちらも2014年2月に中止されています。

特徴

MCSは、以下の様な特徴を持っていました。

超軽量設計

C-17輸送機で3両を空輸するために、重量は24トン以下に制限されました。

ハイブリッド駆動

主要な動力機関は車体前部にまとめられ、MTU社製のディーゼルエンジンで発電した電気でモーターを駆動する、直列ハイブリッド方式を採用していました。これにより、燃費の向上やトランスミッションの小型化、電力供給の余裕などが期待されました。

無人砲塔と高度なC4Iシステム

砲塔は無人化され、乗員は車体前方に配置されました。砲塔上の複合センサーや偵察衛星からの情報など、高度なC4Iシステムのサポートにより、周囲警戒を行いました。操縦手と砲手は、多機能ディスプレイを見ながら、ドライブ・バイ・ワイヤで操作しました。

アクティブ防護システム (APS)

軽量化のため装甲は限定的であり、RPGなどの攻撃に対する防御として、アクティブ防護システム（APS）の搭載が検討されました。レイセオン社のクイック・キル・システムが有力候補でした。

軽量化120mm滑腔砲 (XM360)

軽量化された120mm滑腔砲XM360を搭載し、直接照準射撃だけでなく、視程外射撃も可能でした。専用の中射程誘導砲弾 (XM1111 MRM) の開発も進められました。

ゴム履帯と軽量サスペンション

無限軌道には、軽量なゴム履帯が採用され、油気圧サスペンションにより、軽量化と長いストロークを両立していました。

主要要目（計画値）

車体長：6.34m
全幅：2.53m
全高：2.59m
重量：24t以下
乗員：3名
主砲：120mm滑腔砲 XM360
副武装：25mm機関銃 XM307 ACSW
最高速度：90km/h
航続距離：750km以上

計画の中止とその後

MCSは、2011年にプロトタイプが完成する予定でしたが、MGV計画の中止に伴い、開発も中止されました。しかし、XM360は次世代戦車砲として開発が継続され、グリフィン軽戦車やエイブラムスXにも搭載されています。

参考文献

軍事情報研究会著 『米軍の超軽量ハイブリッド戦車MCS』 「軍事研究 2007年12月号別冊 世界のハイパワー戦車&新技術」 2007年12月1日発行

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