アクティブ防護システム

アクティブ防護システム（APS）とは

アクティブ防護システム（APS）は、戦車や装甲車などの装甲戦闘車両に搭載され、敵の対戦車兵器を能動的に無効化する目的で開発された防御システムです。

APSの概要

APSは、飛来する攻撃（砲弾、ミサイルなど）を検知し、それが命中する前に無力化するシステム全般を指します。多くの場合、360度全方位からの攻撃に対応するように設計されています。

APSは、その実現方法によって大きく2つに分類されます。

ソフトキル・システム: ジャミングやデコイを用いてミサイルの誘導システムを混乱させ、無力化します。
ハードキル・システム: 飛来する飛翔体を物理的に破壊します。

技術的・コスト的にソフトキルの方が簡易ですが、攻撃側からの逆対応や非誘導兵器への無力さから、近年はハードキルシステムの開発が盛んになっています。

戦闘車両用APS

背景

現代の戦車や装甲車は、強力な戦車砲弾や対戦車ミサイルに対して、装甲防御が追いついていないのが現状です。装甲の強化には重量制限があり、特に市街戦やゲリラ戦では車両の上部や後部の脆弱性が問題となっています。

そこで、敵の攻撃そのものを探知して無力化するAPSが注目されています。APSは、重量増加を抑えつつ、全方位の防御を可能にします。

ソフトキル型APS

ソフトキルシステムは、湾岸戦争時にイラク軍が使用しました。ロシア製のTShU-1-7 シュトーラ1は、ロシアの戦車に搭載されています。

ただし、ソフトキル型はRPG-7のような非誘導ロケットランチャーには効果がありません。誘導兵器に比べて命中精度は劣ります。

ハードキル型APS

ハードキルシステムは、ミリ波レーダーなどのセンサーで飛来する飛翔体を検知し、迎撃体を射出して物理的に破壊します。イスラエル製のトロフィーやアイアンフィスト、ロシア製のドロースト、アリーナなどが存在します。

ハードキル型APSには、敵弾を正確に撃墜する難しさや、センサーによる位置暴露のリスクがあります。そのため、パッシブ・センサーによる遠距離探知技術や、僚車や歩兵への被害を避けるための技術が求められています。

近年では、携帯型対戦車ミサイル迎撃用のAPSの実用化が進んでいます。今後は、より高速な砲弾への防御や、車両隊列全体を防御する大規模なシステムの開発も期待されています。

敵も対策をしており、ロシアはAPSを欺瞞するロケット弾を発射するRPG-30を開発しています。

代表的な戦闘車両用APS

トロフィー: イスラエル製。メルカバ戦車などに搭載。
アイアンフィスト: イスラエル製。エイタン装輪装甲車に搭載。
アリーナ: ロシア製。T-80U戦車などに搭載。
アフガニート: ロシア製。T-14戦車などに搭載。

航空機用APS

航空機にとって最大の脅威は対空ミサイルです。航空機用のハードキル・システムはまだ研究段階ですが、ソフトキル手段は多様です。

フレアやチャフ、ECM（電子対抗手段）などが用いられ、赤外線誘導ミサイルやレーザー照射を妨害します。民間航空機向けにも、ミサイル追尾装置を無力化する装置が開発されています。

航空機用のソフトキル兵器は、APSではなくカウンターメジャー（対抗手段）と呼ばれることが一般的です。

艦艇用APS

艦艇は、小中口径機関砲や誘導ミサイルによるハードキル・システムを備えています。CIWS（近接防御火器システム）が代表的で、ファランクスやゴールキーパーなどが存在します。

これらのシステムは、火砲、レーダー、制御装置が一体化され、自動化されています。通常はAPSではなく個艦防御システムと呼ばれます。

艦艇用のソフトキル・システムには、フレア、チャフ、ECMがあります。魚雷に対しては、デコイが用いられます。

まとめ

アクティブ防護システム（APS）は、陸海空の様々なプラットフォームにおいて、生存性を高めるための重要な技術です。 今後、より高度な脅威に対応するため、さらなる発展が期待されます。

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