MLAN

mLAN（music Local Area Network）は、ヤマハ株式会社が開発した音楽機材の通信規格です。この規格は、パソコンなどに搭載されているIEEE 1394端子を利用し、MIDI機器やオーディオ機器などの様々な音楽機材を数珠繋ぎに接続することを可能にします。これにより、接続された各機器の制御信号を一括して送受信することができ、システム構築や機器の追加が容易になります。また、パソコンからの制御も可能であるため、音楽制作環境の効率化に大きく貢献しました。


mLANの最大の特徴は、複数の音楽機器を一つのネットワークとして統合し、それらを一元的に制御できる点にあります。従来の接続方法では、各機器ごとに個別のケーブルや設定が必要でしたが、mLANを使用することで、これらの複雑さを解消し、よりシンプルで柔軟な音楽制作環境を構築することができます。


しかし、2009年にヤマハはmLAN機器の新規開発を終了し、以後のIEEE 1394搭載機器は、マルチピア・トゥー・ピア接続に対応した「Yamaha Steinberg FW driver」に移行することを発表しました。これは、mLANの技術が発展し、より高度な音楽制作環境のニーズに対応するためのものでした。

mLAN対応機種の種類

mLANには、通信速度の違いにより、主に2つの世代に分けられます。前期型は200Mbpsの通信速度を持ち、後期型は400Mbpsの高速通信をサポートします。公式な名称ではありませんが、開発者側では前期型を「第1世代mLAN」、後期型を「第2世代mLAN」と呼んでおり、本稿でもこの呼称に従います。

第1世代mLAN対応機種
mLAN8P
mLAN8E（MOTIF 6, 7, 8, S90, CS6x, CS6R用の拡張ボード）
mLAN-EX（EX5, EX5S, EX7, EX5R用の拡張ボード）
CD8-mLAN
MY8-mLAN
第2世代mLAN対応機種
01X
i88X
mLAN16E（MOTIF ES6, ES7, ES8, S90ES用の拡張ボード）
MY16-mLAN
PreSonus FIREstation
オタリ・ND-20B,DB-32


第1世代と第2世代のmLAN機器間には互換性がなく、異なる世代の機器を組み合わせて使用することはできません。そのため、システムを構築する際には、使用する機器の世代を考慮する必要があります。

Yamaha Steinberg FW driver 対応機種

Yamaha Steinberg FW driverは、スタインバーグ社製のDAWソフトウェア「Cubaseシリーズ」やオーディオインターフェース「MR816シリーズ」との連携を強化するために開発されたドライバーです。このドライバーを使用することで、一部のmLAN機器をWindows XP / Vista 32bit版の環境で、第2世代mLAN機器として利用することができます。しかし、Windows 7やMac OS X v10.6以降のOSではmLANがサポートされていないため、これらのOSではYamaha Steinberg FW driverを選択する必要があります。


Yamaha Steinberg FW driverに対応した主な機種は以下の通りです。

MOTIF XS8
mLAN16E2（MOTIF XS6, XS7用の拡張ボード）
n8, n12（ファームウェアを最新版に更新した場合、Yamaha Steinberg FW driverで動作するようになりますが、mLAN機器としては使用できなくなります）


mLANは、その登場当初、多くの音楽制作現場で活用され、音楽制作の効率化に大きく貢献しました。しかし、技術の進化に伴い、より新しい通信規格やインターフェースが登場し、mLANは徐々にその役目を終えることとなりました。現在では、Yamaha Steinberg FW driverを通じて、一部のmLAN機器が活用されている状況です。

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