MOST (人工衛星)

MOST（Microvariability and Oscillations of STars telescope）について

MOSTは、カナダ初の宇宙望遠鏡であり、そのミッションは星震学の研究に特化していました。打ち上げ当時、世界最小の宇宙望遠鏡であったため、関係者からはハッブル[[宇宙望遠鏡]]をもじって「Humble（控えめな）宇宙望遠鏡」という愛称で親しまれていました。

概要

MOSTの主な目的は、最大60日間にも及ぶ長期間にわたって単一の恒星を観測し、その光度変動を詳細に捉えることでした。大型の宇宙望遠鏡では、さまざまな制約から単一の天体を長期間観測することが困難であるため、MOSTの存在は非常に重要でした。

質量はわずか53kg、サイズも幅65cm、高さ65cm、奥行き30cmと、小型のタンスや大きなスーツケース程度の大きさで、小型衛星に分類されます。この小型軽量さが、低予算での開発と運用を可能にしました。

MOSTは、カナダ宇宙庁、Dynacon Enterprises Limited（現Microsat Systems Canada Inc.）、トロント大学航空工学研究所、ブリティッシュコロンビア大学の共同開発によって誕生しました。開発チームのリーダーはジェイミー・マシューズで、天体地震学データの観測を通して宇宙の年齢を解明すること、太陽系外惑星から可視光の痕跡を探索することを主な目的としていました。

MOSTは、口径15cmのマクストフ望遠鏡と2つの可視光域CCDイメージセンサで構成されています。1つのCCDは画像収集、もう1つは恒星追跡ソフトウェアに使用され、4つのリアクションホイールと連動して衛星の向きを1秒以内の誤差に抑えます。これは、当時の小型衛星としては非常に高い精度でした。

MOSTの設計は、アマチュア衛星で先鞭が付けられ、イギリスの企業SSTLが商用化した設計に基づいています。アマチュア衛星設計のコアグループは、MOSTの設計チームにノウハウとアドバイスを提供し、開発費用の大幅な削減に貢献しました。MOSTの設計、製作、打ち上げ、運用にかかった総予算は、1000万カナダドル（打ち上げ時の相場で約700万ユーロ、600万ドル）以下という低コストで実現しました。

MOSTはカナダ宇宙庁のSmall Payloads Programの資金提供を受け、Space Science Branchによって運用されました。設計寿命は2年でしたが、打ち上げから7年後にはリアクションホイールの1つとCCDドライバーボードの1つが故障したものの、ソフトウェアの更新とハードウェアの冗長性により、2013年6月には運用10周年を迎えました（当初のミッション予定は1年間でした）。

MOSTは当初のミッション目標を十分に達成したとして、2014年9月9日にミッションを終了しました。これは2014年4月30日に発表されました。

なお、世界最小の宇宙望遠鏡の座は、2013年2月に打ち上げられたUniBRITE 1とTUGSAT-1（質量各7kg）に譲っています。

発見

MOSTの運用チームは、数々の重要な発見をしています。2004年には、プロキオンを32日間連続で観測した結果、従来の理論とは異なる振動が見られなかったことを報告し、天文学界で大きな議論を呼びました。2006年には、「slowly pulsating B supergiants」（SPBsg）という新しいタイプの変光星を発見しました。

その他の発見については、ブリティッシュコロンビア大学のMOST science pageにまとめられています。

観測対象

MOSTは以下の天体を観測しました。

プロキオン
オシリス (惑星)
HD 163899（ガイド星）

出典

[外部リンク]

MOST: Canada's First Space Telescope
Microsat Systems Canada Inc. - MOST
UTIAS Space Flight Laboratory
* Canadian Space Agency - MOST

MOSTは、そのコンパクトなサイズにもかかわらず、宇宙科学の進歩に大きく貢献した宇宙望遠鏡です。その成功は、小型衛星が低予算で大きな科学的成果を上げられることを示し、今後の宇宙探査における新たな可能性を切り拓きました。

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