Macintosh IIsi

Macintosh IIsi：妥協なきバランスを追求したパーソナルコンピュータ

Macintosh IIsiは、Apple Computerが1990年10月から1993年3月まで販売したパーソナルコンピュータです。当時のMacintosh IIciとMacintosh LCの中間に位置づけられ、性能、拡張性、価格のバランスが考慮された機種でした。後継機種であるMacintosh Quadra 610の登場とともに、その役目を終えました。

独自の立ち位置

Macintosh IIsiは、高性能なIIciと低価格なLCの中間を埋める存在として登場しました。性能面ではIIciに匹敵する部分もありながら、価格を抑えることでより幅広いユーザー層にアピールすることを目指しました。

ハードウェア

筐体

IIsiの筐体は、IIciとLCの中間のサイズで、拡張性も考慮された設計でした。工具を使わずに組み立てられるように、内部の部品はクリップやラッチで固定されていました。このデザインはIIsi独自のもので、後継機種には採用されませんでした。

CPU

CPUには、Motorola MC68030（20MHz）が搭載されていました。オプションのPDSカードを追加することで、MC68882浮動小数点コプロセッサも利用可能でした。コプロセッサが標準装備されていなかったため、一部のアプリケーションが動作しない問題がありましたが、SoftwareFPUというソフトウェアでエミュレートすることで対応しました。

RAM

IIciと同様に、30-pin SIMMスロットが採用されています。

ビデオ

最大解像度640x480、8bitカラーのビデオ出力に対応していました。ただし、コスト削減のため、メインメモリの一部をビデオメモリとして共有していたため、特に初期のIIsiではビデオ速度が遅くなることがありました。この問題に対しては、ディスクキャッシュサイズを大きく設定することで、SIMMバンクに搭載された高速なRAMからビデオメモリを使用するように設定することで、改善が見込めるというテクニックも存在しました。

PDS

PDS（Processor Direct Slot）に取り付ける変換アダプタを使用することで、NuBus拡張カードも利用できました。このアダプタには、浮動小数点コプロセッサが搭載されているものもありました。

その他の入出力

SCSI、シリアルポートx2、ADBポートx1、フロッピーディスクポートx1、3.5mmステレオヘッドホン出力、マイク入力など、当時のMacintoshとしては標準的なものが搭載されていました。

構成

40MBまたは80MBの内蔵ハードディスクを選択できました。

不具合

経年変化により、スピーカー接続が不良になることがありました。これは、モノラルスピーカーがロジックボード下のドーターボード上に配置され、バネ状の接点を使用していたことが原因でした。スピーカーの振動が接点のフレッチングを引き起こし、接触不良につながっていました。この問題は、マザーボードを取り外し、ドーターボードの接点を清掃することで解消できました。

雑学

作家のチャールズ・ブコウスキーは、Macintosh IIsiの熱心なユーザーだったことで知られています。

参考文献

ASCII 1983年2月号

外部リンク

Macintosh IIsi teardown at ifixit.com

Macintosh IIsiは、性能、価格、拡張性のバランスを追求した意欲的なモデルでした。その独特なデザインや、当時の技術的な制約の中で工夫された設計は、今もなお多くのMacintoshファンに愛されています。

もう一度検索