Magic theatre

magic theatre

『magic theatre』（マジック シアター）は、日本のロックバンド、La'cryma Christiが1998年に発表した3枚目のスタジオ・アルバムです。オリコン週間チャートでは最高位27位を記録しました。

アルバム概要と特徴

本作のアートワークは、可愛らしいタッチで描かれた兎が目を引きます。この兎が手にしているギターやベースは、実際にメンバーがステージやレコーディングで使用していた楽器をモデルにしている点が特徴です。しかし、その愛らしい見た目とは裏腹に、この兎のモチーフには殺人鬼を象徴するという意図が込められており、アルバム全体の持つ多層的な世界観を示唆しています。

アルバムに収録された楽曲は、すべてLa'cryma Christiとアレンジャーの岡野ハジメ氏によって編曲されています。バンドの持ち味である叙情的なメロディと、様々な音楽的要素を取り入れたアレンジが融合し、聴きごたえのある作品となっています。

収録曲に見る多様な世界

タイトルチューンでもある「Magic Theatre」は、このアルバムの収録曲の中で最も演奏時間の長い楽曲であり、約11分11秒という大作です。バンドの演奏力と楽曲構成力が存分に発揮されています。

続く「イスラエル」には、曲中に不思議な響きのコーラスが挿入されていますが、これは日本語の歌詞を逆再生したもので、その内容は歌詞カードには掲載されていません。この秘密のコーラスが掲載されない理由としては、「苦情が来る可能性が考慮されたため」と明かされています。

「SCORPION GLASS」の歌詞は、ボーカルのTAKA氏がテレビ番組で放送されていた神風特攻隊の特集に触発されて書き下ろされたものです。この楽曲は、次トラックの「Blossom」へと間断なく繋がる構成となっています。「Blossom」は8thシングルのカップリング曲としても発表されており、この曲の歌詞に含まれる「君の揺れる瞳のなかで 咲いていたいのさ」というフレーズについて、TAKA氏はかつて出演したテレビ番組の中で、自身の女性を口説く際の常套句であったと語るユニークなエピソードがあります。

また、「GUM」という楽曲は、スティーブン・キング原作の映画化作品「スタンド・バイ・ミー」をテーマにして歌詞が書かれており、ノスタルジックな雰囲気を漂わせています。

シングル曲としてリリースされた9thシングルのタイトル曲「Lime rain」と、そのカップリング曲である「ファシズム」も収録されています。「ファシズム」はアルバムバージョンもシングルと同じく前曲から繋がる構成ですが、この楽曲は当初、アルバムへの収録が見送られる可能性がありました。しかし、ドラムのLEVIN氏が強く支持したことで、最終的に本作に収められることとなりました。メンバー間のクリエイティブな意見交換が作品に影響を与えた一例と言えるでしょう。

アルバムの終盤に収録されている「雪になって消えた二人」は、曲の冒頭にドラムのLEVIN氏による「1・2・3・4」というカウントが生々しく収録されています。これは、この楽曲がセッション形式でレコーディングされた際の様子をそのままパッケージしたものです。

インストゥルメンタル楽曲の「Dear Natural」には、ボーカルのTAKA氏による朗読が含まれていますが、その具体的な内容は歌詞カードには記載されておらず、聴き手の想像を掻き立てます。

『magic theatre』は、このようにバラエティ豊かな楽曲と、それぞれにまつわる興味深いエピソードが詰まった作品であり、La'cryma Christiが持つ音楽性と世界観の広がりを感じさせる一枚となっています。

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