Multi Video System

SNK Multi Video System (MVS) とは

Multi Video System（マルチ ビデオ システム、以下MVS）は、SNKが1990年代に展開したアーケードゲーム基板です。1つの筐体で複数のゲームを遊べるという画期的なシステムで、当時のゲームセンターに大きな影響を与えました。MVSは、アーケード版のネオジオとも言え、家庭用ゲーム機ネオジオ（AES）とほぼ同等のハードウェアスペックを持っています。

MVSの特徴

最大の特長は、1つの基板に最大6本のゲームカートリッジを装着できる点です。これにより、ゲームセンターは限られたスペースで多様なゲームを提供することが可能になりました。筐体には、2人分の操作デバイスに加え、クレジット表示用の7セグメントLED、ゲーム切り替えボタンが備えられています。

初期の筐体では、選択中のゲームのインストラクションカードがELパネルで点灯する機構がありました。また、ネオジオとの連携を目的としたメモリーカードスロット搭載筐体も存在しました。MVS用とネオジオ用のカートリッジに互換性はありませんが、変換コネクタを使用することで流用も可能です。

インストラクションカードのサイズを補うため、ゲーム開始前に操作方法の説明が表示されたり、デモ中にタイトルロゴが頻繁に表示されたりするなどの工夫が凝らされています。誤って意図しないゲームにコインを投入した場合でも、切り替えボタンでクレジットを保持したままゲームを変更できる親切設計も特徴です。

さらに、各ゲームの売上データを蓄積し、人気を把握できる機能も搭載されており、ゲームセンターの運営者にとっても便利なシステムでした。メモリーカード経由での収入集計システムも計画されていたようです。

MVSのバリエーション

当初は基板単体での販売予定はありませんでしたが、市場の要望に応え、1本スロットの基板も販売されました。以下に代表的なバリエーションを紹介します。

1本スロット

MV-1: メモリーカードユニット、ネオジオコントローラー、ステレオミニジャックを装備。
MV-1F: MV-1を小型化し、メモリーカードユニット端子を省略。
MV-1FZ: MV-1Fをさらに小型化し、音声をモノラル化。
MV-1A: 対戦BIOSを搭載。
MV-1B: 基板を小型化。
MV-1C: カートリッジスロットをメイン基板と一体化し、コストダウン。

複数スロット

複数スロットのものは専用筐体に組み込まれて販売され、JAMMA規格とは一部端子が異なります。

MV-2F: 2スロット。
MV-4F: 4スロット。
MV-6F: 6スロット。

カスタム基板

MV-0: セキュリティ強化のため、カートリッジ方式を廃止した一枚基板。『SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS』、『メタルスラッグ5』、『ザ・キング・オブ・ファイターズ2003』の3タイトルに採用。

MVSの開発と販売

SNKは、筐体を無償で貸し出し、収益を徴収するという独自の手法でMVSを展開しました。これにより、ゲームセンター以外にも様々な店舗でMVS筐体を見かけることができました。

MVS向けタイトルの開発には、アートボックスというツールが使用されました。デザイナーが作成したスプライトを16x16ドット単位で分割し、ROMに書き込んでから開発基板で再構成するという手法がとられていました。

その他の情報

麻雀ゲームに対応するため、専用コントロールパネルに置き換えたMVS筐体も存在しました。
コイン投入時の効果音は、テレビ番組でよく使用されています。
* 後継基板として、ハイパーネオジオ64が存在します。

MVSXの登場

2021年には、SNK公認の家庭用ゲーム機「MVSX HOME ARCADE クラシック レトロアーケード」が発売されました。初期の赤い筐体をモデルとし、17インチLCDスクリーンに50タイトルを収録しています。MVS版と家庭用版がプレイ可能ですが、収録タイトルは海外版となっています。

MVSは、アーケードゲームの歴史において、重要な役割を果たしたシステムです。その革新的なアイデアと豊富なゲームラインナップは、多くのファンを魅了し続けています。

もう一度検索