NGTS-13

恒星 NGTS-13とその惑星系

NGTS-13は、地球から約657パーセク（概算で約2000光年に相当します）の距離に位置する恒星です。地球から非常に遠いため、夜空における見かけの明るさは12.7等級と暗く、一般的な観測手段では捉えることが困難です。この恒星は、その物理的な特徴から、中心での水素核融合を終え、より光度が高く半径の大きい準巨星へと進化しつつある段階にある可能性が示唆されています。

このような遠方の恒星の周囲を詳細に探査するプロジェクトの中で、一つの重要な発見がなされました。それが、NGTS-13を公転している太陽系外惑星、NGTS-13bの存在です。この惑星の発見は、「次世代トランジットサーベイ（Next-Generation Transit Survey, NGTS）」という、チリのアタカマ砂漠にあるパラナル天文台に設置された複数の小型自動望遠鏡群による観測ネットワークによって実現しました。NGTSは、広大な空域にわたる多数の恒星の明るさを継続的にモニタリングし、恒星の手前を惑星が通過する際に生じる周期的な減光現象、すなわちトランジットを検出することを主な目的としています。

NGTSによる長期にわたる観測データの中から、NGTS-13の明るさが周期的にわずかに減少する兆候が捉えられ、これによってNGTS-13bの存在が推測されました。この初期検出結果に基づき、さらに詳細な分析と検証が進められ、2021年1月12日に、その存在を確実なものとして報告する研究論文が、天文学のプレプリントリポジトリであるarXivに公開されました。

NGTS-13bの検出に主要な役割を果たしたのは、トランジット法です。この手法は、遠方の恒星の手前を惑星が周期的に横切る際に、恒星の光が惑星によって一部遮られることで、地上や宇宙空間の望遠鏡で観測される恒星の明るさがわずかに、かつ規則的に低下する現象を利用して惑星の存在を間接的に証明するものです。NGTSの観測によれば、NGTS-13bは約4.119日という短い周期で主星NGTS-13の周囲を一周していることが判明しました。

軌道の解析からは、この惑星が主星から比較的近い距離にあることも明らかになりました。具体的には、その軌道長半径は約0.0549天文単位と推定されています。これは、地球と太陽の間の平均距離である1天文単位と比較して非常に近く、太陽系内で最も内側を公転する惑星である水星の軌道（約0.387天文単位）よりもさらに内側にあたります。このような主星に近い軌道を公転する短周期の巨大ガス惑星は、「ホットジュピター」と呼ばれるタイプに分類されることが多いですが、NGTS-13bは特にその質量において注目すべき特徴を持っています。

NGTSによる初期検出の後、NGTS-13bの存在を独立した観測で確認し、特にその質量を決定するために、他の観測装置や手法を用いた追跡観測が実施されました。その一つが、NASA主導の宇宙望遠鏡であるトランジット系外惑星探索衛星（TESS）による観測です。TESSもまたトランジット法を用いますが、宇宙からの観測であるため、地球大気の影響を受けずに高精度な測光データを提供でき、NGTSの発見を裏付ける重要な役割を果たしました。さらに、チリのラ・シヤ天文台にあるCORALIE分光器を用いた観測も行われました。CORALIEは、恒星の視線速度の変化を測定するドップラー分光法（ラジアルベロシティ法）に特化した装置です。惑星の重力によって主星がわずかに揺れ動く際に生じる視線速度の微細な変化を捉えることで、惑星の質量を推定することが可能になります。CORALIEによるドップラー分光法のデータ分析から、NGTS-13bの質量が木星の質量の実に4倍を大きく上回る、極めて重い巨大惑星であることが明らかになりました。

このように、NGTS-13系は、進化しつつある準巨星の非常に緊密な軌道に、異常なほど重い巨大惑星が存在するという点で、太陽系外惑星研究における興味深い対象となっています。このような系の発見は、惑星がどのように形成され、主星が進化する過程で惑星系がどのように変化するのか、といった現代天文学の重要な問いに対し、新たな知見をもたらすと期待されています。NGTS-13bのような重い巨大惑星が主星に近接して存在する事実は、多様な惑星系の形成・進化シナリオが存在することを示唆しており、我々の太陽系のみに捉われない、より普遍的な惑星系の理解へと繋がる重要な発見と言えるでしょう。

もう一度検索